誠の旗の元で

拾玖 ページ20

斎「…A……なのか？」




貴「何を言うてますのん一はん。お留守番頼まれてるのはうちらだけどすえ？」




斎「そう…だったな」




貴「驚いてはりますね？」




斎「驚くもなにも…元舞妓とは聞いていたがここまでとは…」




貴「これでも、太夫になれる〜言うて育てられ続けておりましたから…」




斎「そう…か……」




いつもと違う喋り方




いつもと違う格好




かなり動揺しているように見えた




貴「あ、忘れてた。
お料理どす。今日は一はんとうちしかおらんから豪華にできてはりますよ
お酌しましょか？」




斎「あぁ…頼む」




元から口数が少ない一くんは、さらに無口になってしまった




貴「一はん…今晩ずっと黙ってるつもりどすか？
うちがつまらんやないどすか…
もうちょっと普通にしたらどうえ？」




斎「あぁ…すまない……
と言っても、普通とは…」




貴「普通は普通どす。
あ、そうや。一はんはよく空みてはりますよね？」




斎「あぁ。そうだな。空も海も好きだ。
無限に広がるものを見ているのが好きなのだ」




貴「そうなんどすかぁ
うちも、星をみるのは好きどす
きらきらしてて、見よると落ち着くんよぉ」




斎「…綺麗だな」




貴「…？あぁ。今日のお星さんも綺麗どすぅ！」




斎「いや…そうではなく……」




貴「…？」




斎「いや、星ではなく…」




貴「…何やようわからんけど、はっきり言うたらどうえ？」




斎「星ではなく…
服と化粧だけでここまで変わると思ってなかった。
綺麗だ｣




貴「ありがとうございます」




斎「あぁ」




そう言うと、一くんはそれきり目を合わせてくれなくなった




貴「かいらしいわぁ…
何人も相手にしてきてんけど、ここまで楽しい思ったことはないどす」




斎「褒められているのかけなされているのかわからぬが…」




貴「…また、このなりでお酌できるのはいつになるやろか」




私がそうつぶやくと、一くんはやっとこちらをみた




斎「その格好でなくても酌は頼む
…普通の町娘の格好でも
その格好でも。」




貴「なんでもええんやないどすか…ﾌﾌｯ
普段もお酌させてもらいますぅ」




平「ただいまぁ」




貴「平助！
みなさんも！おかえりなさい！」

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