第1話 ページ1
フィオーレ王国には数多くの魔道士ギルドが存在する。その中でも力のあるギルドといえば妖精の尻尾、そして幽鬼の支配者。
王国の北東、オークの街にある堅牢な石造りの建物で今日もわたしは一日が終わるのをじっと待つ。
「ぎゃはははは! おめー依頼人やっちまったのかよォ!」
「しょーがねぇだろ? 報酬金を増やせって言っても聞かねぇんだからな!!」
またっ、この人達は…っ。
ぐっと両手を握り締め、怒りのままに叫び出してしまいそうなのを抑える。
依頼した人はきっと、自分達では解決出来ないことだから魔法を扱うギルドに依頼したのだろう。それを承諾し、きちんと解決してそれから仕事に見合った報酬を貰う。それが私達魔導士のお仕事の筈なのに。
ここの、ファントムロードのそういった人達にも、何も言い出すことの出来ないわたしにも腹が立つ。
「おー、ユリアちゃんじゃーん!」
「ほら早く酒を持って来い、よッ」
ガッ
『うっ……はい』
空になった酒瓶で殴られたせいで垂れてきた血を拭い、慌ててカウンターへお酒を取りに走る。
悔しい…悔しいっ…!
あと少しで零れそうな涙をきゅっと唇を噛み締めて耐える。反抗なんて、しちゃダメ。あの子を助けるためにも、がんばるって決めたんだから。
「ヘッ、あれでガジルと同じドラゴンスレイヤーとか嘘だろ。なァ?」
「やっべー、オレってばドラゴンちゃんに攻撃しちゃったぜー!」
「ありゃドラゴンじゃねぇよ。トカゲだろ」
「だなぁ! ぎゃはははは!」
竜を滅する技は本当に必要になった時だけ使いなさい。怒りのままに力を揮ってはいけません。力を使う時をよく考えなさい。
3本の酒瓶をぎゅっと抱き締めて、おとうさんが言っていたことを心の中で唱える。そうすると怒りがさっきよりも静まっていつもの自分に戻れる。これはおまじない。
『…お、お待たせ、しました』
薄暗いギルドの雰囲気、煙草とキツイお酒のニオイから逃れたい。ファントムロードのギルドマークを消したい。あの子に早く会いたい。
わたしは望みが叶う時を、ただ待っているだけ。
『きっと…きっと、迎えに行くから。待ってて………ルア』
ぼそりと。誰にも聞こえないようにそっと空気に言葉を溶かした。
.
106人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
霽月(プロフ) - 神楽さん» はい! なんとか頑張ろうと思います!! (2016年4月11日 22時) (レス) id: 83e6391475 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - 更新頑張ってください! (2016年4月11日 16時) (レス) id: 565dcc1977 (このIDを非表示/違反報告)
霽月(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます! 二人で頑張っていきますね。 (2016年1月20日 8時) (レス) id: 83e6391475 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 更新楽しみにしています。応援してます! (2016年1月17日 21時) (レス) id: 09f4f555da (このIDを非表示/違反報告)
霽月(プロフ) - 茜さん» ありがとうございまっす!!!がんばりまーす! (2015年7月22日 23時) (レス) id: 25f10af713 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:霽月 桜 x他1人 | 作成日時:2015年3月29日 18時