【番外】シトリン【前編】 ページ28
これはまだ、私と夏目が小学生だった頃の話。
☆
夏目の家族と私の家族で小旅行として行ったのは栃木県の日光。
当時の私は日光東照宮を見ても、「大きい所」としか思わなかったけど。
ともかく、止まったホテルにほど近い所に竜頭の滝という名所があった。
歌予さんに唆された私は夜、夏目と一緒に星を見に行ったのだけれど…。
(ここからは幼い瑚宵さん視点でお送りします)
迷った。
ついさっきまで夏目くんと手を繋いでたのに…。
明かりはある。
懐中電灯がひとつ。
最初は大丈夫!と思っていたけれど、段々と不安になってくる。
真っ暗…怖い。
「な、夏目くん!」
ふわっと響く自分の声に返ってくるのは虫の声だけ。
どこ…いっちゃったの?
下手に歩いて転んだりしたら危ないかも。
そう思ってその場に蹲る。
空を見上げれば星が綺麗に瞬いている。
それを見つめていたら、なんだか涙まで浮かんでくる。
私、このまま1人なのかな…。
お母さんに怒られちゃう。
夏目くん、大丈夫かな?迷ってないかな?
ついに涙が零れて、頬をつたい、ポタリと地に落ちた。
泣いちゃダメ…。
慌てて涙を拭う。
「夏目くん、泣いてないかな…。」
ポツリと、誰に聞かせるまでもなく呟いた言葉だった。
なのに、
「泣いてるのは瑚宵でしょ。」
後ろから、それに応える声が聞こえた。
振り向くと、大好きな人がそこにいて。
「夏目…。」
反射的に声が出た。
腰に手を当てて頬を膨らまして、明らかに『怒ってますよ』感を出す夏目くんに少し怯んだ。
「ほら、大丈夫?涙拭いてあげる。」
しゃがんだ夏目くんは自身の服の袖でやや強引に目元を拭いた。
痛いけど、嬉しい。
「出来た。」
それだけ言うと夏目くんは私の隣に腰を下ろす。
「もうダメでしょ。勝手にどっか行っちゃったら。探したんだからね!」
「ごめんなさい…。」
そういえばはぐれた原因は私が走ったからか。
とりあえず素直に謝る。
「もうここで星見よ。こんなにも綺麗なんだから。」
そうやって夏目くんが指さした先には、さっきよりもうんと輝く星の大群が見えた。
不思議だね、少ししか時間は経ってないはずなのにすごく綺麗なんだよ。
私はそっと手を伸ばして、夏目くんの手を掴んだ。
「またはぐれないように!」
「…いいよ。」
そう笑ってくれた夏目くんは、とってもかっこよかった。
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*SSU* - 更・新・頑・張って・ください・ネ♪ (2020年4月17日 18時) (レス) id: b6be28c7e2 (このIDを非表示/違反報告)
矢澤こゆき - 初コメ失礼します。目は大切ですし、後悔しては遅いので治療頑張ってくださいね!!更新も楽しみにしてます。 (2019年9月23日 20時) (レス) id: 9da7dff2c7 (このIDを非表示/違反報告)
Lien(プロフ) - 更新楽しみにしてます!これからもがんばってください! (2019年9月23日 19時) (レス) id: 023ad1d1e4 (このIDを非表示/違反報告)
小豆 餅(プロフ) - コメント失礼します。いつも楽しみに見させてもらってます(*^ω^*)これからも頑張って下さい!応援してます! (2019年9月7日 9時) (レス) id: 803e6e2014 (このIDを非表示/違反報告)
萩(プロフ) - お菓子なこいしさん» それはもう!お菓子なこいしさまの好きなようにどうぞ!よろしくお願いします(土下座)(土下座) (2019年9月2日 16時) (レス) id: cfe465a6d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:萩 | 作成日時:2019年5月17日 23時