【ツイステ】君に紡ぐ夢想曲【男主】 (ページ10)

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音楽家･チェーノを支持するフレーズとして、「生きる活力」だの「死から立ち直らせてくれた」「日々の暮らしの糧」だの非常に重々しい表現が使われることがある。そして公演を終える度に、そういった類の言葉を直接向けられることも少なくない。

暗に人の人生を背負っているような感覚に、常人ならば陥るだろう。

「君がいなければ生き甲斐が無くなる」なんて、一周まわって脅しにも思える言葉に怯えてしまったって可笑しくはない。他の音楽家とは一線を画した期待や重圧が、チェーノには確実にあったと言える。

けれども彼は、いつだって他人(ひと)のために奏でてきた。一時も怠らず、何事にも臆する素振りを見せることなく、聖人君子の如く微睡んでいた。

他者の声に応え続けることに生き甲斐を感じているのか、はたまた逃れられない運命を諦めた果てにいるのか。その瞳に映し出される感情が何なのかは、本人のみぞ知る。

とは言え彼の存在が沢山の人々を支えている今へと繋がっているのであれば、これ程音楽家冥利に尽きることなどないのだろう。

しかもその演奏は決して替えの効かない、正に唯一無二の所業である。だから人々が助けを求める限り、チェーノ･ラルフィアは音楽を止めない。世界が止めることをもう許さない。

もはや人間に限らず、現世の垣根を越えた"何か”にさえ取り憑かれたように愛されることになろうとも、その全部をすくう(･･･)のが彼の役割なのである。

『ぼくは何にもつらくないよ。だから、心配しないで』

いつの日かそう言って笑った彼に対して、苦虫を噛み潰したように見つめることしか出来なかった＊＊＊には取り戻しのつかない後悔があった。

"アイツ”から何もかもを奪い、音楽家チェーノ･ラルフィアを生み出してしまった。もう償う機会さえ消え失せた後悔。

同じ学園にいるのだからすぐにでも会えるのに、面と向かって話せる気がしなかった。自分が加害者のクセして、きっとまた(･･)酷いことを言ってしまうんだろうから。やっぱりこんなどうしようもない僕は許されちゃダメだ。

例えチェーノがつらくないと言ったって、本当は＿

途方のないやるせなさと自己嫌悪が只管に渦巻いて、思考回路をぐちゃぐちゃにさせながら、＊＊＊は布団に潜り込み無理矢理睡眠へと意識を切り替えた。

だって身体を丸めて眠ってでもいなければ、罪悪感に塗れてしょうがなくなるから。

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