case.12 ページ13
数分後、車に近付いた人の気配でAは目を覚ました。
『…思ったより早かったですね〜。』
くわぁ、と欠伸を一つ零して、Aは運転席へと呟いた。
まさか起きていると思わなかったのか、僅かながらに肩を揺らして、先程Aの琥珀色の瞳を見た時と同じ様な表情をを浮かべた降谷。
「すみません、起こしちゃいました…?」
『いえ、そういう体質なんで。』
Aは伸びを一つした後に、シートベルトを装着した。
「体質、ですか…」
降谷は、何か言いたげに彼女を暫く見つめるも、視線を正面へと移動させて、車を発進する。
『お目当てのものは買えましたか』
「ええ。こちらから連れてきておいてお待たせしてすみません。…それからこれ、よろしければどうぞ。」
信号待ちの間に差し出されたのは野菜ジュースとあるものが入った箱。
それに今度はAが驚愕の表情を浮かべれば、降谷はくすりと笑う。
『…わざわざ、気を遣わせてしまったみたいですみません。おいくらでしたか?』
「お金なんていりませんよ。ちょうど近くに薬局があって良かったです。お詫びだと思って受け取ってください。…まぁ、僕はその琥珀色の瞳、結構好きですけどね。」
その一言にAは何処か懐かしい気持ちになった。かつて、自分のこの瞳を一番最初に好きだと言ってくれた人。その人はもうこの世には居ない。
少し泣きそうになって、それを誤魔化す様に視線を逸らし、窓の外を見つめた。
『…ありがとうございます。』
自分でも驚くくらいに小さな声で呟かれた礼が、彼に聞こえてたかどうかはわからないけれど。
彼の厚意をAは素直に嬉しく思った。
サングラス越しに流れる景色を見つめながら、嘗ての旧友に思いを馳せて、彼女は静かに口角を緩めるのであった。
262人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
trr - 続編待ってます!!!! (2018年12月10日 5時) (レス) id: 4ac3c5bb30 (このIDを非表示/違反報告)
咲空(プロフ) - 坂竹会長さん» ご指摘ありがとうございました!(´・ω・)っ【ティッシュ】 (2018年10月19日 13時) (レス) id: 1695bf9265 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - 更新頑張ってください。夢主ちゃんの設定がドストライクです。貴方が更新するたびに、僕の鼻からイチゴオレです←汚なッッッッ。 失礼しました。_ーд#_ (2018年10月14日 10時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - ページ26、名前変換なっていませんよ。(名前)と向き合うってなってます。間違っていたらすみません 失礼しました (2018年10月13日 21時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - はじめまして、すごく面白かったです! (2018年9月27日 15時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:咲空 | 作成日時:2018年5月17日 1時