拐って仕舞って閉じ込めて。『d!』 (ページ5)

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Episode4 ページ5

寝苦しさから目覚めると目の前いっぱいに青色が広がっていた。
顔を上げればそれは誘拐犯の背中で、自分はそれを抱きしめるような形で眠っていた。

自分はこんなところで眠れてしまうのかと神経の図太さを感じた。

誘拐犯は眠っている……今なら逃げれる。

身体を動かそうとしたところガチャリと金属音。
どうやら手錠のようなもので右腕を繋がれているようだった。

右腕の繋がれた先は触った感じ誘拐犯の右腕のように感じる、

外れないかとうごめいたが誘拐犯の微かな動きにビクビクとしてしまう。

逃げなければ。

｢動かんといて、手首痛いねん。｣

起こしてしまった……？

誘拐犯が不満そうに忠告…？文句…？を告げた後、右手に指が絡まってきた。親指と人差し指の間に彼の人差し指が、そのまた間には中指が。
俗に言う恋人繋ぎである。

｢まだ眠いんや、一緒に寝よか。｣

ゾワっとした、上から見下ろすようにして優しい笑顔がそう告げた。
イカれてる、私は今逃げようとしていたのに。
自分は寝ると宣言した……、
逃がさない、いや逃げれないわけなのか。

だがそれでも、逃げてやる。

そんな決意をした途端右手を握る彼の手が強くなった。
彼の顔を見上げると口元が笑っているような気がして恐ろしかった。

｢Aさんって１回目ぇ覚めたら眠れんタイプ？｣

｢い、いや、特に意識したことは。｣

突然話しかけられたと思えば「逃げるのか？」とかでは無く私の睡眠についてだった。
逆に恐ろしい。

｢ふーん、じゃあ寒いんか？もっとこっちよってええで？｣

｢いや、寒くないです……｣

いや、余計に逃げにくい、どうにか切り抜けたい。

｢ええからこっちおいで｣

…！抱き寄せるようにして彼はゼロ距離レベルまで私に近付いた、心臓の鼓動がお互いに聞こえるレベルであった。
そして後頭部に手を軽く添えられているのだが、イメージ的にはガッチリとホールドされているようである。
怯えれば彼に明らかに伝わる、口から飛び出そうなほどの心臓の鼓動に自分でもビビりるほどだ。
既に怯えている。
私はこの目の前の男に怯えている。

私はそんな男と、親子、兄弟、恋人、親しい中であるかのように1つのベッドで寝ているのである。

ああ、なんとも恐ろしい……。