12話 笑いの空間 ページ12
お昼ご飯が終わり食器を手洗いしていると
後ろからぽんっ、と肩を叩かれる。
「Aちゃん、俺も手伝うよ」
ラップがかかっている私の食事をチラッと見て
だいちさんが腕まくりをした。
「いえ、私の仕事なので大丈夫ですよ」
「お昼まだ食べてないでしょ？一緒にすれば早く終わるしさ」
今、この空間には私とだいちさんしかいない。
もしかして気遣ってくれているのだろうか。
…それだと失礼になりそうだし、しょうがない。
「わかりました。では、拭いて頂けますか？」
「りょーかい！」
だいちさんにふきんを渡し、
お皿についた泡を黙々と水道で流していると
「Aちゃん、どう？この仕事楽しい？」
ゆっくりとした口調で話しかけてくる。
「楽しいです」
「よかった。俺、ここにいる時は嫌な事を忘れられるんだよね」
…確かに。
この空間は、笑いが溢れ過ぎている。
「だいちさん、悩みなさそうな感じだと思ってました」
私がそう言うと、
だいちさんが吹き出すように笑い出す。
「いやいや、俺だって一つや二つあるよ」
拭き終えていく度に重なるお皿の音を聞きながら
言葉に耳を傾ける。
「あいつら、笑わせてくるから自然と楽しくなるわけよ…あ、ちょっとごめん」
だいちさんが私を見て何かに気づいたように
私に向かって手を伸ばす。
何かと思って反射的に目を閉じると
私の頬を何かをぬぐうように指が擦れていく。
「泡、付いてた」
優しい笑みを浮かべながら
だいちさんは出しっぱなしの蛇口で手を洗う。
「ありがとうございます…」
…気づかなかった。
少しだけ心臓の音がうるさい。
「Aちゃん、何かあれば俺らに頼るなりしていいし」
そうか。
だいちさんは、あの日のことを気にして…
最後の1枚のお皿を洗い終え、蛇口をひねった。
「ありがとうございます。でも大丈夫ですから」
私の心に空いた穴を埋めることなんて
誰も出来やしないんだから。
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影裏(プロフ) - 更新まってます！！ (2022年6月6日 4時) (
レス) @page33 id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
カシスちゃん - 次のお話が気になります！ 更新待ってます (2019年10月24日 2時) (レス) id: df66e26c2f (このIDを非表示/違反報告)
名無し22819号(プロフ) - コメント失礼します、1話から全部読みました！いいお話ですね！一つ質問なんですが、このお話は誰オチですか？ (2019年10月8日 13時) (レス) id: 422de7f24a (このIDを非表示/違反報告)
麗音 - 最近見始めました！ (2019年9月21日 9時) (レス) id: f13e29755c (このIDを非表示/違反報告)
みりんみみ(プロフ) - かなちぃさん» お返事遅くなってしまい申し訳ありません。ありがとうございます！いつでも振り返られるように工夫してみました♪ (2019年8月17日 13時) (レス) id: d6ce8c8a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みりんみみ | 作成日時：2018年12月23日 15時
