私、感激する ページ7
数学の授業を進めていく中で、どうしても分からない部分が出てきた。
前の中学ではまだ習っておらず、どうも理解が追いつかない。
どうしようかと頭を抱えていると、上杉くんこう声を掛けてきた。
上杉「分からない、のか。」
メガネの奥から覗いているふたつの目は、青く見えるほど透き通っていて、何でも見透かされていそうだ。
A「うん…。」
私が正直にそう言うと、上杉くんは仕方がないといったように、はぁと息を吐いた。
それから机へ全体重を乗せるようにして両手を付き、私の方をちらっと見る。
上杉「で、どこなんだ?」
どうやら、教えてくれるみたい。
上杉くんに見えやすいよう教科書を配置し、私は行き詰まっていた大門5の部分をシャーペンでトントン、と軽く叩いた。
A「ここなんだけれど…」
上杉くんはふぅーと息を一気に吐き出す。
上杉「この問題は…」
私の表情を伺いながら、とても丁寧にポイントを抑えた説明をしてくれる上杉くん。
その腕前といえば、同い年だとは思えないくらい。
驚くほど分かりやすいんだ。
A「あっ、分かったかも知れない。」
上杉くんの発言にヒントを得て、自力で解いてみることに。
数学が得意だという上杉くんを前にして問題を解くというのは、少しばかり緊張した。
でも、期待に応えたいという気持ちもあって、何とか止めることなくペンを走らす。
数学は大の苦手教科なはずなのに、すごく不思議な感覚だ。
順調に最後まで書き終えて、恐る恐る上杉くんの方へと視線を向ける。
上杉くんは私が書き出したものに目を通し終えると、フッと笑って私を見てきた。
上杉「やればできんじゃん。」
その時になってやっと、上杉くんの笑った顔を見た気がする。
あまりの衝撃に、私は思わず聞き返した。
A「ほんと、に?」
つい嬉しくなって、ニタニタしてしまう。
そんな私の様子に、上杉くんはどこか困惑しているようだった。
上杉「お、おう、、!」
そんな上杉くんに構わず、私は感動を覚えながらこう言った。
A「ぜーんぶ上杉くんのおかげ。ありがとう!」
上杉くんは目線を下に落とし、私に聞こえないくらいの小さな声でポツリと呟いた。
上杉「別に、大したことしてねーよ…」
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作者名:よつば | 作成日時:2020年3月8日 21時