氷上で煌めく太陽１１

５００話《GPF2014 男子FS》 ページ9

試合後のクールダウンをしながら、トレーナーさんと画面越しに男子の試合を見守る。


今、５人目の町田さんが演技中だ。

ハビはこの時点で暫定１位。
町田さんとゆづくんの結果で、最終的な順位が決まる。


トレーナー｢A、OKだ。あとはユヅルの応援でもしようか｣

｢ありがと｣


立ち上がって身なりを整えて、部屋の一角にあるモニターに見入る。



町田さんはジャンプの失敗が続いて得点が伸びず、６位でファイナルを終えた。

あとはゆづくんだ。



最終滑走のゆづくんがリンクに出てきた。


大歓声の中、ゆづくんの演技が始まる。



一番最初の４回転サルコウはバッチリ決まった。
２つ目のトゥループも余裕すら感じられるキレイな着氷。


スピンも綺麗だし、２つのコンビネーションジャンプもしっかり決めてきた。


ここから続くジャンプをしっかり決めて、スコアはどんどん伸びていく。


顔を撫でるような仕草はすごく色っぽくて、ああ、これでまたゆづくんのファンが増えるな、なんて思ったりして。


だけど本当にかっこいい。


プライベートな感情を抜きにしても、羽生結弦という一人のスケーターは、その演技で人を惹きつけて離さない。


いつまでも見ていたい。

そう思わせる力を持ってる人だ。



これは、ゆづくんももしかしたら……と思いながら見ていた時。


｢あ、｣


最後のジャンプ、トリプルルッツで転んだ(笑)

なんかゆづくん本人も笑ってるし(笑)



演技はクライマックスへ。

コレオシークエンスと２種類のコンビネーションスピンもしっかり決めた。


もう、もう……やったよ。
ゆづくんも勝利を確信したのか、最後の顔がもう自信たっぷりだった。


今シーズンは腰痛でフィンランディアに出られなかったり、中国杯のアクシデントで思うようにスケートが出来なくて辛い時間を過ごしてきたゆづくん。

最後のルッツは見なかったことにするとして、最高のファントムを演じきれた事がすごく嬉しかった。



トータルスコアは『288.16』


2位のハビに35点近い差をつけて優勝が決まった。


｢やった……！やったあ！｣


ゆづくんと一緒に優勝という目標を達成出来た瞬間。
嬉しくて、見えるはずもないのに画面の向こうのゆづくんに向かって拍手をした。

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