30 死神�� ページ22
・
兄、ミリの訃報をおばさんやミランに伝えようも、自分で足を運ぶことも文を書くこともできない無力さに苛立った。
口頭で兄の死を伝えられた時は、変な冗談はよしてくれ、と信じることができなかった。
しかし、汚れたマントを渡されて、それが現実なのだと痛感させられた。
部下を庇ったらしく、なんとも兄らしいと納得してしまう。
壁外調査の前に書いた遺書は、おばさん、ミラン、私宛の三通だった。
それから数週間して、なんとか松葉杖を付いて動けるようになった。団長の気遣いで、わざわざ馬車を用意してもらって、遺書を届けに行った。
調査兵団からおばさんやミランの元へ兄の訃報は届いていたと思うが、遺書は私の手で渡したかった。
兄は最期まで兄らしかったと。
誇らしいと。
家族である私がちゃんと会って伝えたい、伝えなければならない、そう思った。
その日、遺書と兄の私物を渡すとおばさんは、涙を流しながら崩れ落ちた。初めて見る、酷く取り乱した姿に私は立ち尽くすことしかできなかった。
その後、訓練兵団にいるミランの元へ向かった。午後の訓練が行われているだろうと考えながら、馬車から降りるが、訓練場は訓練どころではないと言わんばかりに、
奥の方には黒い煙が上がっているのが見えて、ただ事ではないことが分かった。
支えられている兵士や横たわっている兵士…負傷者も多く出ているようだ。
「あ、あの…何があったの？」
「事故です！
訓練中、器具の誤作動で…」
前を通った少年に問うと、動揺しながらも簡潔に答えてくれる。
自分も負傷者の介抱をしなければと思うが、この身体では容易に動くこともしゃがむこともできず、返って邪魔になってしまう。
ハッとして、妹の安否を確認しようと辺りを見渡すが、なかなかその姿が見つからず、嫌な緊張で汗が落ちる。
「スメット…？ウィル・スメットか？？」
後ろから声をかけられて振り向くと、一年前まで自分もお世話になっていた教官が立っていた。
「お、お久しぶりです！教官！」
「…ついてこい」
その言葉にドキリと心臓が嫌な音を立てる。
教官に連れられた所には、数名の兵士が並んで横たわっている。
その奥には見慣れた、妹の姿＿＿＿＿＿＿
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 244人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：earthn | 作成日時：2022年3月24日 19時
