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『でも、朔間さんの事あまりにも酷く言われたから…』
「ん？」
少女がその次の言葉を紡ごうとしていたのだが、一度躊躇って止まった事に疑問を覚え聞き返すように首を傾げると
少し間を置いてからおずおずと
『ひ、ひっぱたいた。』
そう言った。
「は？」
聞き間違いかと思い、咄嗟に聞き返すと、少女は先程よりはっきりとその言葉を復唱した。
どうやら嘘では無さそうだ。
「ひっぱたいた？俺の事を悪く言ったやつを？」
『何回言わせる気ですか…。』
「くっ、ははっ…！」
何度聴いても答えは同じで、本当にやった事を確認出来たのと、それを想像したせいで零は吹き出して笑った。
昔の少女と重ねた時、そんな行動をとるのは有り得なかったから、意表を突かれて妙な笑いが生み出されたのだ。
『えぇ…！？何で笑うんですか！？』
「だって昔はンな事絶対やらねぇヤツだったからよ。」
『大切な人の悪口を受け流してやるもんですかって、私も成長したんですよ。』
胸を張って、自信満々にそういう少女の言葉の中に自然に含まれた単語を零は受け流す事が出来なかった。
寧ろ自ら拾いに行ってしまった。
「大切─…？」
『そうです、大切─……あ。』
「へぇ、その大切って中には昔の好きってやつも混ざってんのか？」
ニヒルな笑みを浮かべて、揶揄う様に問い詰められ
少女は自分の放った言葉に後悔を覚えた。
『入ってません！今はその場のノリみたいなもので、口からバーって…』
「口から自然に出る言葉が本心だっつーけどな。」
そう言われると何も返せず、押し黙る。
そんな様子を見て零はけらけらと笑った。
「冗談じゃねぇ事は分かったから。俺の為にぶん殴ったんだろ？ありがとな。」
『殴ってないです。誇張しないで。』
「はいはい。…さっき校舎裏でお前が、「私がこんなんだから俺が悪く言われて悔しい」っつってたろ？」
零は不服そうに否定する少女を軽くあしらって、話を続ける。
指摘された自分の言葉。
あれもまた感情的になった少女の口から自然に出た言葉なのだが、改めて覚えられた上気持ちが落ち着いた今に言われてしまうと恥ずかしくなり、顔を背けながら頷く。
「勘違いしてるみてぇだから言っとくけどよ。自分のこと「こんなの」とか言うな。」
「俺が認めてんだから、こんなのなワケねぇだろうが。安っぽくされるのはゴメンだ。もっと図々しいくらいに胸張っとけ。」
『…昔と同じ事言ってる…。』
「あ？なんか問題あっかよ。」
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作者名：黒凛蝶 | 作成日時：2022年6月14日 16時
