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「話したらアンタごと学院から追い出す事も出来るから。」
きっと文頭には"お父さんに"、という文字が入るだろう。
少女はこれに動揺もせず、困惑する様子一つ見せない。
「〜ッ!アンタのその顔がムカつくっつってんの!!」
髪を引っ張られ、壁に頭を押し付けられる。
痛みに顔を歪めて、腕を掴むと彼女は手を離し、少女を罵った。
「最初っから何もかも上手くいってるみたいな顔してすまして、見下してる態度がウザイ!朔間さんと関わってるからって良い気になってんじゃねぇよ!」
何も思わず、聞き流していると一際大きな声で彼女はこう言った。
「朔間さんも所詮は顔だけ!きっとアンタみたいに努力もしないで全部成功してきて見下してるのよ。そのくせ歌だって、性格だって最低、応援してるこっちが馬鹿馬鹿しくなってくるし、最悪!残念な奴が残念な奴と関わってるってだ─
パシンッ
乾いた音が室内に響いた。
その彼女の言葉を最後まで聞くまでもなく、少女は彼女の頬を思い切り叩いていた。
本当は手をあげるつもりもなかったのだが、前といい今回といい、手のひらを返して零の事を何かと悪く言う彼女を見逃せなかった。
「な、なにす─」
少女は彼女の胸ぐらを掴んで初めて反論した。
『取り消せ!!!』
真っ直ぐな怒声が後ろで話していた仲間の声も同時に静まらせた。
『貴女にとって私は気に食わない存在かもしれない、それならそれでいい。水をかけられようが物を盗られて捨てられようが、どうでもいい。』
『でも零の事を悪く言うなら絶対に許さない。』
少女に圧倒されて、叩かれた頬を抑えながら反抗する。
「最初に手あげたのはそっちだから!!しかも何、今更朔間さんの身内面して、ウザ。」
少女はそれ以上何も言わない。
ただ、怒りを孕んだ目で彼女を見据えている。
彼女は反抗したのが気に入らない様子ではいたが、互いの怒鳴り合いで何やら外がざわついている。
仲間も拙そうな顔をして彼女に耳打ちして、説得したのか腕を引っ張ってこの場を離れるように促していた。
「…アンタの楽譜返してあげる。もう必要ないから。精々そのゴミでも握りしめて死ねば?」
そう言って彼女の手から投げ出されたのは煤けたファイル。
中を開く燃えかすと共に灰が落ちてきた。
それを胸に抱き抱えて寮へと走る。
外廊下、その道中肩が誰かとぶつかる。
小さな声で謝って進もうとすると腕を掴まれる。
思わず動きを止めて振り返ると
「嬢ちゃん…?」
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作者名:黒凛蝶 | 作成日時:2022年6月14日 16時