松野チョロ松がドルオタになった理由。 (ページ7)

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５話。ページ7

Aとは、ただの保健委員と怪我した人、という関係じゃなくて、普通に友達となっていた。

僕は、それ以上の関係になりたかったけれど、今のままで十分満足していた。

そして、あの日がきた。

男なら誰でも待ち構えるバレンタイン。

もしかしたら、くれるかも…。いや、そんなわけない。という言葉を1日に何度思ったか。

放課後になっても残念ながら、貰えなかった。

そりゃあそうだ。ただの友達だし。

虚しくて、切なかった。

今まではこんな２月１４日なんて気にも留めなかったのに。

チョコを頂戴などと言えるわけもないし、仕方なく帰ろうとしたとき、ふと一つの漫画の話を思い出した。

そして、僕は精一杯の力で走った。

「はっ、花束、を…ください」

教えてもらった番号に電話をかけて、外はもう暗いのに、呼び出した。

『いきなりだね…びっくりしたよ』

「ごめん…。これを渡したくて」

『花？綺麗だね。でも、いきなり何で』

「僕が、渡したかったんだ」

Aは不思議そうに首を傾げた。

『こういうのは、もっと可愛い女の子に渡せばいいのに…』

「ハハッ、そしたら学校全員に渡さなくちゃ」

『失礼ね』

最後まで、結局家に送るだけでチョコは貰えなかった。

相手を待つより、自分から行動した方が良い。

なんて。思ったりした。

前に読んだ、漫画。

そこには、男がバレンタインに花を贈っていた。

日本以外の国では、バレンタインって男から恋人へプレゼントする人らしい。

ロマンチックだな。自分には到底関係のない話だろう。

そんなことを思っていた。

Aはそんな意味も知らないだろう。多分。

あいつ、本当に鈍いからなぁ。とクスッと笑い、白い息を吐いた。