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「で、どういう事だね、敦君」
茶色いロングコートを来たその男性は私を遠目に見て言った。
「それがこの人、記憶喪失みたいなんです」
麦わら帽子の少年は快活に答えた。
「記憶喪失?? そんな珍しい事があるものなのか?」
眼鏡の長身が向こうから口を出した。
「でも、嘘を吐いてる訳じゃなさそうなので、しばらく置いてあげて下さい」
麦わら帽子の少年は一礼した。
「……今日限りだ。二人が帰ったら彼女の身の振りを決める」
眼鏡の長身が言うと、白髪の少年と麦わら帽子の少年は部屋から出、ロングコートと眼鏡の長身は椅子に座った。
「掛けてくれたまえ。ね、樋口一葉さん」
「何故、私の名前を知ってるんですか」
掛けようかと思い、とどまる。
雰囲気と言い、この男性は怪し過ぎる。
「君が覚えていなくても私達は君を知っているからね」
微笑む。この姿、作り物染みている。
「あなた達は、何者なんですか」
男性の目をじっと見詰め、問いかける。
「私達は武装探偵社。君の居たポートマフィアの敵だよ」
「ポートマフィア?」
言葉を繰り返す。
「おや、本当に覚えていないのかい?」
「申し訳ありませんが、全く」
諦めて腰を下ろし、首を振った。
「うーん、それは困った。国木田君」
眼鏡の長身はパソコンから目を離さない。
「なんだ、太宰。俺は忙しいんだ」
相当イラついているらしい。
「彼女の手にここの住所を書いたのは誰だと思う?」
「単純に彼女を運んだ人物だろう」
「それが誰だか知りたいんだよ」
「知らん。マフィアの下っぱじゃないのか?」
「それはおかしい。彼女を部下に任せるとは思えないからね」
「その手の話はお前の得意分野だろ、お前が考えろ」
二人の会話について行けず、ただ呆然とした。
「思うに、これは芥川の書いたものだ。彼は彼女に随分思い入れがあったみたいだからね」
そう言ってから、男性はニコリと笑った。
「それこそ、私と心中してくれないかなぁ? 君の様な美人となら心中してもいい、本当さ」
「あくまで敵だ、太宰。誰でも口説こうとするな」
眼鏡の長身は速攻で突っ込みを入れた。
「ところで、あの……」
私は話に割り入って言った。
「私はこれからどうすればよろしいですか?」
二人はしばらく考えて答えを出した様だ。
「……医者を紹介しよう。危険な人ではあるけど腕は確かなはずだ。もうすぐ帰る頃だと」
言いかけたその時、ドアが音を立てて開けられた。
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蒔愛(プロフ) - 日常的さん» いえ、文ストの中でも好きなキャラクターです。何かお気に障ることがございましたか?良ければお教えください。 (2018年4月28日 0時) (レス) id: 0e9106e5ea (このIDを非表示/違反報告)
日常的 - 作者さんは樋口が嫌いなんですか? (2018年4月28日 0時) (レス) id: f7c5d2c875 (このIDを非表示/違反報告)
蒔愛(プロフ) - 二葉さん» お読みいただきありがとうございました。感想ありがとうございます。 (2018年1月21日 13時) (レス) id: 0e9106e5ea (このIDを非表示/違反報告)
二葉(プロフ) - 拝読させて頂きました。切なさで一杯になり思わず涙が溢れましたが、4章の後半に差し掛かった頃には切なさとはまた違った涙が溢れるばかりでした。迚も心に残る良い作品でした。 (2018年1月21日 13時) (レス) id: aa4e1ad83a (このIDを非表示/違反報告)
蒔愛(プロフ) - ギオさん» お読みいただきありがとうございました。感想ありがとうございます。 (2018年1月17日 7時) (レス) id: 0e9106e5ea (このIDを非表示/違反報告)
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