罪で結ぶ絆 2

揺れる瞳 ki ページ49

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伏せられた睫毛と少しだけ開いた可愛い
唇。野菜を洗いながら、隣で玉葱を切っ
ている玲さんの横顔を盗み見ていた。

俺の視線に気づいているのかいないのか
口角が微かに上がっている。

そのうちに、玉葱が目に染みて痛いのっ
て、潤んだ眸をパチパチとさせ、俺を見
て優しく微笑んだ。


玲さん……


さっきは一緒に死んでやるなんて言った
けどさ、玲さんを死なせることなんて絶
対にしないよ。

俺は学もないし、どうしようもない人間
だけど、それだけは誓うから……。





* * *





ようやく夏の暑さが和らいできたある日
のことだった。



「ミツ、後で話しがあるんだ」



その緊張したような面持ちに、こっちも
変に身構えてしまう。


「あぁ……いいよ」


既に閉店していたが、金曜ということも
あってか、店内にはジャズが流れ、常連
客達はまだ酒を呑んでいた。

やたらと撓垂れ掛かってくる女の客を、
入口まで送り戻ってくると、玉は磨いて
いたグラスを置いて、ここではゆっくり
話せないからちょっとだけ裏口にいい？
と言ってきた。









初秋の夜空に浮かぶ月は、くり抜かれた
ようにくっきりと冴えながらも、この季
節特有のほっこりとした温かみを纏って
いた。


カラッと涼しい夜風が心地良かった。


既に、玉には玲さんと付き合い出したこ
とを話していた。

玉が彼女に好意を持っていることは何と
なく感じていたから、胸が傷んだが、は
っきり言うことが玉のためだと割り切っ
た。

あの時の玉は、一瞬顔を歪めたけれど、
“良かったね、相手がミツなら安心だよ”
そう言ってくれたんだ。








「玲さんのことなんだけど……」


そう言い、さっきから伏し目がちに下を
向いている玉。

その態度から、言い難いことなんだとわ
かった。





「玲さんのこと？」

「うん。あのさ……言おうかずっと迷っ
てたことがあって」


そう言ってから顔を上げた。


「うん」

「俺、実は大分前に……六本木の高級ホ
テルで玲さんにばったり会ったことがあ
るんだ……玲さんて普通のＯＬだって言
っていたけど……俺、違うと思う」

「え？」







「…………多分、ホステス」




ホステス？……玲さんが？





「どうしてそう思ったの？」

「どうしてって……」



何と言えばいいか困惑しているんだろう
消え入りそうな声と、揺れる瞳が俺を捉
える。







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