罪で結ぶ絆 2

夢 ki ページ32

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「ああ、違うと思うよ」



玉は、何度か瞬いた後、大きい溜息ととも
に呟いた。



「そっか……」

「うん」



そう、ヒヨリの好きな男は俺じゃない。


少しの沈黙が流れた。玉は何を考えてい
るのかわからなかったが、自分に言い聞
かせるようにもう一度「そっか……」と
呟き、口をきゅっと結ぶと、小さく首を
縦に振った。








「ミツ……言いにくいことを話してくれ
て嬉しかったよ」

「俺のこと、軽蔑しただろ」



問いかければ、今度は頭を横に振る。


「軽蔑なんかしないって。もう充分苦し
んできたじゃん……そんなに自分を責め
ないで」

「……その言葉だけで嬉しいよ」


柔らかく笑う玉に、本心が言葉となり、
震えた声となって口から出た。


「ミツの話聞いてさ、只、運命って本当
にあるんだな……って凄く感じてるよ。
もし神様がいたとしたら、もうミツは、
……許されていると思う」



許されている？……俺が？

玉が優しさで言ってくれているのか、俺
を憐れんでいるのか、俺にはわからなか
った。

運命というか、因縁だと思った。あの過
去があって、俺とヒヨリがこんな形でま
た出会うなんて……

もし神様がいるとしたら、既に許されて
いるのではなく、許されるために償う機
会をくれたんじゃないかとそう思った。

だけどその機会はもう来ないかもしれな
い。

ヒヨリは俺の前から姿を消してしまった
から……








「ミツ、一緒に寝よう」


シャワーを浴びて戻ってくると、シーツ
が替えてある。俺に向かって唐突にそん
なことを言い出す玉に、思わず目が丸く
なる。


「え？玉とかよ」

「いーじゃん！前はよくこうやって寝た
じゃん！」


ふにゃんと表情を崩し、ベッドにご
ろんと横になった。可愛いやつ。




「ねえミツ」

「うん？」

「ミツは何か夢ある？」

「夢？」

「そう、夢」


間接照明だけの部屋。天井を見ている玉
の、綺麗な横顔を思わず見つめた。

俺の夢は、金を貯めてあの姉妹に償うこ
とだ。いつか探し出して、謝って、許し
てなんて貰えるはずはないけれど、それ
くらいしか思いつかなかった。

自分の夢なんて持っちゃいけないと思っ
てきたから。



「夢ねぇ、今はないかな。玉は？」

「俺は、世界を見て回りたい」

「世界？」

「うん。違う国を色々見てみたい、イン
ドとか、ウクライナ、トルコにも行きた
いな。俺はこんなちっぽけな日本の、ち
っぽけな自分なんだって打ちのめされた
いよ」









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