罪で結ぶ絆 2

初恋 ページ15

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　なるほど、オーナーに借りがあって辞
められないのね……



　正直、ひろだったらどんな職業でもや
っていける気がする。コミュニケーショ
ン能力に長け、人当たりも良く頭の回転
も早い。

　上流階級の客が沢山いる、あのクラブ
でのナンバーワンだ。収入も多いはずだ
しきっと貯金もあるだろう。

　これからは、何も身体を売らなくても
生きていけるはずなのに。義理堅いのか
多額の借金があるのか……


それともどっちもなのか……？







――でも、もうここまで……

　これ以上は、私には踏み込めない領域
だった。






　遠い昔に忘れられない子がいるって言
っていたけれど……じゃあヒヨリは？

　ひろにとって、ヒヨリはどんな存在だ
ったの？ただの遊び？それとも暇潰し？

まだ高校生だったのよ。

心がすーっと冷えていく感覚がした。








「だからさ」


　眩しそうに目を細め、木漏れ日を見て
いたひろの視線が私に戻る。


「この前も話したけど、玲さんが俺を好
　きだって言ってくれたその気持ちが、
　もし本当なら凄く嬉しいよ。だけど付
　き合えない……」

「もし本当ならって……本当だよ……」



　ひろは何も答えずに、ふっと笑っただ
けだった。


　目の前に、突然シャッターが下ろされ
た気がしたが、私は確かな手応えを感じ
ていた。

　ホステスなんかをやっていると、相手
から送られる好意の感情が自然とわかる
ようになる。

　ひろが私に亡くなった妹さんの話をし
てくれたのも、私に好意を抱いているか
らでしょう？

　そうじゃなかったら、ヒリヒリと痛む
剥き出しの心を、私に見せてくれるかな
？





　私を見つめ湖面のように静かに潤む眸
は、いつも切なげに揺れていて……

　今にも溢れそうな、熱い想いを抑えて
いるように感じるの。







「じゃあ……ひろのこと、これからも好
　きでいるだけならいいの？」



　刹那、葉が落ちた時の湖面にたゆたう
波紋のように、ひろの眸が微かに揺れた。




「こんな仕事の男なんて止めた方がいい
　こうやって、金で疑似恋愛をする事も
　可能だけど、それも偽りの愛を金で買
　うことになるから。

　玲さんにとって幸せな恋とはいえない
　でしょう？偽りはどう転がっても偽り
　だから……

　いつかはその化けの皮が剥がれてさ、
　虚無感だけが残ることになる……
　それでもいい？

　俺なんかやめて、玲さんならいくらで
　もいい男が見つかると思うよ」









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