罪で結ぶ絆

それから ページ10

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　私たちが移り住んだのは、東京都の多
摩地域南部にある市で

　交通の便も良く商店街もある。閑静な
住宅街というよりも繁華街といった印象
の街だ。


通勤には一時間ほどかかるが、都内で家
賃が比較的安いのと、私の仕事場に近く
ない方がいいと思っていたから丁度良か
った。



”Aちゃん、綺麗な部屋だね！”

”こっちがヒヨリちゃんのお部屋だよ”

”自分だけの部屋なんて嬉しいっ！”




ヒヨリちゃん……



　部屋の中央にごろんと横になり、嬉し
そうに笑う、あの時の彼女の笑顔が忘れ
られない。




　私たちが選んだのは、駅から少し歩か
なければならない古いマンションだった
が、今までの生活とは比べ物にならない
ほど快適で

　女性の入居者が多くセキュリティも
しっかりしており、リフォームを済ま
せた部屋はかなり綺麗だった。



”お金、大丈夫なの？”

”大丈夫よ、今まで貯めた貯金だってあ
　るし、それに国からお金が支給される
　から”


”うん……”

”私も働きだしたんだから、そんな事は
　心配しないでいいんだよ。大学だって
　行かれる余裕はあるからね、遠慮した
　らだめよ”



　あの家で遠慮しながら生活してきた妹
は、いつの間にかお金のことを凄く心配
する子になっていた。

　私は中学生になったばかりの妹に、ホ
ステスをやっているなんてどうしても言
えなくて、六本木にある普通の会社に勤
めているとだけ話した。





＊





　それから六本木のその店で約二年働き
更なるステップアップをする為に今の店
へと移った。

　六本木にはクラブや、会員制ラウンジ
などは星の数ほどあるが、本当の意味で
の高級クラブは数えるほどだ。


『クラブＮＯＢＬＥ』もその一つだった。


　老舗のクラブだったから、銀座とまで
はいかないまでも、客層はとても良い。
大手企業経営者や役員、最近では、ＩＴ
関連の３０代の社長の方なども来て下さ
っていた。



　『ＮＯＢＬＥ』の詩乃ママには、経済
には強い方がいいから、○経新聞は読ん
だ方がいいこと

　できれば教養があるに越したことはな
いが、それよりも常識と配慮、人を受け
入れる優しさ、人間関係の賢さが大切だ
と一から全て教えてもらった。




”玲ちゃんはどこか儚げなのよね、そこ
　がまたいいのかしら？”




『玲』というのは私の源氏名だ。




　売上のノルマもあったからそれなりに
厳しい世界だが、ママにはとても可愛が
ってもらったと思う。





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