罪で結ぶ絆

哀しい過去　ki ページ47

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「むかーしむかし、ある所に幼い兄妹が
　優しい両親と一緒に住んでいました。

　ある日のこと、その妹は、母親の留守
　中に母を探しに家から抜け出し、事故
　にあってしまいました。

　嘆き悲しんだ両親は心を痛め、父親は
　母親を責めました……そして――…」

「ひろ……？」





「そして――っ」

「ひろ、いいよもうっ、ごめんっ！」




玲さんに抱きしめられた時、俺は自分が
泣いていることに気づいた。

何だよ……俺、こんな奴じゃねぇだろ？
本当に調子が狂うんだって……



「ひろっ、もういいからっ」


玲さんの顔が滲んで見えた。









　安曇野は、北アルプス山麓から湧き出
る豊かな水流のおかげで、精密機械工業
が盛んな街だ。

俺の義父は、そんな街の精密機械工場で
働いていた。

俺は母親の連れ子で、妹は母が再婚して
から義父との間に出来た子だった。

俺が小学二年生だったあの日……学校か
ら帰ると、家の前に数台のパトカーが停
まっていた。

俺の目に飛び込んできたのは、半狂乱に
なっている母親と、何をしていたんだと
母親を罵倒する義父。

俺は、ヨチヨチ歩けるようになった妹が
行方不明になっていることを知った。

探し回った。探して、探して、探して。
近隣の人達も協力してくれて、皆で妹を
探した。

けれど必死の捜索も虚しく、翌朝、用水
路で妹は発見された……。

それまでの義父は、連れ子の俺のことも
可愛がってくれていた。だけどあの日以
来、彼は変わってしまった。







俺の義父は気づいていたんだ。

母が不倫していたことを……







そして妹が家を抜け出した時、母親が何
をしていたのかも……。







「私、ひろが好きだよ……」




遠い昔に想いを馳せていた俺は、玲さん
の言葉で我に返った。


「え……？」



俺が好き？……玲さんがこんな俺を？
いや、有り得ねえわ。



「それ、本気じゃないだろ？」

「本気よ……あなたに惹かれてる……」



「……」



客に恋愛感情を持つことは許されない。
それにこんな俺が、まともな恋愛ができ
るとでも？



「玲さんは俺のお客様です。恋愛感情は
もてません」



彼女の眸が哀しげに揺れた。



「じゃあキスして……愛する人にするの
と同じキスをしてほしい」

「……わかった」




「ひろ……」



俺を甘く呼ぶ、彼女の声が空気に溶けて

鼓膜を震わせ――



彼女をベッドに組み敷くと、優しい指が
俺の唇にそっと触れた。








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