心音 ki ページ46
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玲さんと手を繋ぎ、冷たい風が吹き抜け
る緩やかな上り坂を歩いた。
夜空に浮かぶ白い月とは対象的な、目を
刺すような原色のネオン。
道玄坂のラブホテル街には、猥雑な雰囲
気が漂っている。
「どこもいっぱいだな……」
「ひろ、私はどこでもいいよ」
週末のホテルは混んでおり、やっとのこ
とで、一部屋空いていたホテルを見つけ
た。
今のラブホテルは、昔とは大分違うらし
い。外観の派手さとは違い、部屋の内装
はシンプルで、さながらシティホテルの
ようだ。
「何か飲む?」
玲さんに声をかけると、小さく頷きお水
が飲みたいと言った。
冷蔵庫からミネラルウォーターを出して
コップに注ぎ渡してやる。
「ひろ、ありがとう……」
ミュージアムで俺の妹の話をしてから、
様子がおかしいのは薄々気づいていた。
彼女にも妹がいるって言っていたから、
俺に感情移入してしまったのかもしれな
い。
「少し横になる?」
「うん……」
伏し目がちに答えた玲さん。
「あー、俺、具合悪いお客さんを無理や
り襲ったりしないぜ?」
「……違うの。ひろに……」
「うん?」
「隣にいてほしいの」
「それ、添い寝しろって意味?」
「ダメ?」
「いや、お客様の要望には応えますよ」
何故そんな言い方をしてしまったのか?
自分が意識して、彼女を客として扱おう
としていることに気づく。
客に対してこんな気持ちになったことは
今まで一度もない。俺はどうかしている
……。
玲さんは俺を買ったに過ぎないだろ?
ただ彼女といると……
金で買われていることを忘れてしまいそ
うで怖かったんだ。
玲さんは少しだけ哀しそうな顔をした後
ベッドに横たわると、俺の方に手を差し
出してきた。
「具合どう?」
彼女の隣に寄り添い、俺に擦り寄ってく
る柔らかい身体を抱き寄せた。
「ありがとう、もう大丈夫」
「そっか、なら良かった」
「ひろの心音、安心するの」
「うん」
俺の胸に顔を埋め、じっとしている。
「ねぇ、ひろ」
「ん?」
「やっぱり何でもない」
「何だよ、言いかけてやめんの?」
「あのね……」
「うん」
「……私の妹もね、……死んだの」
え……?
「私達は、似ているね……」
彼女の掌が俺の頬にそっと触れた。
とっても温かい
優しい、優しい手だった……。
この時、何で妹の話をしようと思ったの
かは全くわからない。
気づけは話し出していた。
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siori(プロフ) - れいさん» れいさん、初めまして。フラグの部屋は、R18指定があるので設定が必要な為コミュに登録していないと見られないのです。サイトのルールなので申し訳ないのですが年齢が大丈夫であれば登録すれば読むことは出来ます……。 (2019年9月22日 21時) (レス) id: 25b2988e99 (このIDを非表示/違反報告)
れい - ※の続きが読みたいです。もし宜しければ見方を教えていただきたいです (2019年9月22日 11時) (レス) id: 1d3b0a592d (このIDを非表示/違反報告)
永瀬なつ(プロフ) - ※の続きの見た方が知りたいです(´・ェ・`) (2018年12月25日 22時) (レス) id: 579642299a (このIDを非表示/違反報告)
キラみつ(プロフ) - ※の続きの見方教えて頂きたいです!! (2018年10月18日 19時) (レス) id: 4ba300fb0f (このIDを非表示/違反報告)
m228evanescent8(プロフ) - とても引き込まれる内容で楽しく読ませて頂いてます。※の続きの見方おしえてください! (2018年10月18日 9時) (レス) id: 834a07e579 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:siori | 作成日時:2018年8月17日 12時