罪で結ぶ絆

陽光の下で　ki ページ42

・







　その次の週末、玲さんから指名が入っ
ていた俺は、待ち合わせ場所のカフェに
向かった。

　青山通りにある、フラワーショップが
併設されたボタニカルカフェで、店内は
サンルームのようになっており、自然光
が入る気持ちの良い空間だった。

玲さんはすでに来て待っていた。奥の席
から俺を見つけると、にっこり笑って手
を振ってきた。



「ひろ」

「何かお洒落な店ですね、あんまりこう
　いう店には入り慣れてないな」

「そう？でもルキアだってお洒落だよ」

「あれは職場ですから」




　俺が笑うと玲さんも笑った。白いセー
ターにニット帽が可愛い。俺より年上だ
ったけれど、自然光の中で微笑む彼女は
俺よりも幼く見えた。



「今日は買い物に付き合ってくれる？」

「はい」



買い物ねぇ……
これ、普通のデートでしょ？


　あんな高い金払って会員になってさ、
一体どういうことなんだろう？玲さんの
真意がわからない。









　店から出ると、みず色の絵の具で刷い
たような空から柔らかい陽光が降り注い
でいた。


あぁ……気持ちいい。
こういうのっていいなぁ


　忘れていた感覚というか、久しぶりに
浴びる柔らかい陽光が優しくて、身体の
中から暖かい何かが溢れ出るような感覚
がした。


「気持ちい……」

「え？」

「いや、陽の光浴びるのって久しぶりだ
　なぁって」

「ふふっ、ひろはヴァンパイア？」

「ヴァンパイアは、陽の光浴びたら死に
　ますって」

「あっ、そうだったね！」


玲さんは可笑しそうにくすりと笑った。



「で？どこ行きます？」

「ひろ、敬語やめてって言ったよね」

「あ、つい」

「手、繋ぎたいな」

「じゃあ、恋人繋ぎしようか」


　玲さんの手に指を絡めると、恥ずかし
そうに握り返してきたから、繋いだ手を
ポケットの中に入れた。


「なんか新鮮だな」

「何が？」

「玲さんと会うのいつも夜だったから。
　太陽の下の玲さんってのもなかなかい
　いよね」

「ひろもだよ」




　思えば、こんな風に手を繋いで外を歩
いたことなんて今まで一度もない。

　初めて女と寝たのは中三の時、相手は
担任の教師だった。俺の家庭環境を心配
してくれ、受験のことでも世話になって
いた先生にいきなり誘われたんだ。


狡猾で最低な女。

どうしていいかわからなかったが、俺は
言われるままに、その女の上で猿みたい
に腰を振った。



俺が女を冷めた目で見るようになったの
は、多分この頃からだ。






・

真意　ki→←確信　ki

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す