罪で結ぶ絆

確信　ki ページ41

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“ヒヨリって、どこ出身？”


アトラクションに並んでいる時、玉が何
気なく訊いた。


“生まれたのは横浜みたい。その後、安
曇野に移り住んだの”

“安曇野？”


キョトンとしている玉。


“信州の安曇野だよ。長野県”


安曇野……か。

懐かしい響きだな……でも、ヒヨリが安曇
野にいたなんて凄い偶然かもしれない。



“じゃあ、両親はまだ安曇野にいるの？”

“ううん、もういないの”

“じゃあ、一緒に住んでるんだ？”

“ううん”


“え？…………今……ヒヨリの両親は？”

“もういないの。死んじゃったんだ”

“そうだったんだ……”



“うん……火事で二人とも。私は小さくて
その時のこと全く覚えてないの。今はお
姉ちゃんと二人で暮らしてるよ”




火事……？

心臓がドクンと音を立てた。



“何か、変なこと訊いちゃってごめん”


玉が申し訳なさそうに項垂れると、ヒヨ
リは、もう昔のことだからって笑った。





……喉がカラカラだった……





“ヒヨリのお父さんて……何してた人？”

“小さい工房の家具職人だったの”







家具職人……





間違いない……






安曇野、家具職人、姉妹、火事で亡くな
った両親……


バラバラだったパズルピースが、俺の頭
の中で一枚の絵になった。


あの子だ……

メラメラと燃える橙の炎と黒煙が見え


この時、雷に打たれたように、俺はその
場から動くことができなかった。




“ミツ、動き出したよ”

“え？あ……”

“大丈夫？”

“あぁ、大丈夫だよ”



ヒヨリがあの姉妹の妹ならば、俺よりか
なり年下だ。あの時、確か幼稚園だった
はずだから……きっとまだ高校生。


黒川さんが、高校生をキャバクラなんか
で働かせるはずはない。バレたら一発で
営業停止処分だろ……。

用心深い彼が、そんな危険なことをする
はずはないと思った。


ヒヨリ……


姉妹で苦労して、夜の世界で働くしか選
択肢がなかったのかもしれない。


苦しくて、胸の奥が締め付けられるよう
に痛み、二人の会話が頭の中に入って来
ない。




ヒヨリは今、何をしているのか？




“裕太！こっち見てるよっ、可愛い！”

“んははっ、可愛い〜”

“ミッ○ー！！！”



キャラクターに向かって手を振るヒヨリ
と玉の笑顔と、華やかなパレード以外、
この日のことはあまり覚えてはいない。









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