罪で結ぶ絆

秋の気配　ki ページ40

・






“二十歳？”


こくりと頷く彼女。女の年はわからない
からね……


“今日はオーナー来てるの？”

“はい……私はここで待つように言われ
ました”

“ふぅーん……何か飲む？”


彼女は頭を横に振ったが、今日は汗ばむ
ような陽気だったから、喉が乾いている
と思い、冷蔵庫の中のアイスティをコッ
プに注いで彼女の前に置いた。


“とーぞ”

“ありがとうございます……”

“ヒヨリちゃんは俺と同い年だね、敬語
やめない？”

“はい……”


緊張しているんだろう、アイスティには
手をつけず、ずっと膝の上でスカートを
握りしめていた。

長い髪を後ろでひとつに結び、オレンジ
色のトップスにタイトスカート。

赤い唇とけばけばしい目元。どこか幼さ
の残る顔に不自然さを感じた。



“あれ？ミツじゃん、どうしたんだよ”


店の奥から黒川さんがやって来た。


“今日は暇だったんで、夏向きのオリジ
ナルカクテルでも考えようかと思って”

“そうか、熱心だね”

“はい、まぁ”





“香山さんお待たせ、じゃあ始めようか”


黒川さんは俺に笑顔を向けると、彼女と
話し始めた。








これからの季節は桃のカクテルなんてい
いかもね……

カウンターから彼女を見ると、黒川さん
と何かを話しながら、時々口に手を当て
て笑っている。本来は明るい子なのかも
しれない。

うちのオーナーは、人の心を溶かすのが
上手い。ほら、ああやってするりと人の
心に入って行くんだ……。








――それから……


彼女はたまにバーに遊びに来るようにな
った。酒は弱くて直ぐに酔うから飲めな
いと言っていた。

だからいつもノンアルコールカクテルを
作ってやった。


“綺麗な色！”


ヒヨリのお気に入りは、綺麗な色のザク
ロシロップを使った甘いノンアルコール
カクテルだった。



この時は、オーナーが経営している都内
のキャバクラで働いているものとばかり
思っていたから、酒が飲めないのは困る
だろうな、なんて思ったりしてたっけ。


そして徐々に玉とも仲良くなり、店が休
みの日には、三人で遊びに行くようにま
でなった。



“今ね、ディ○ニーランドはハロウィン
のイベントやってるんだって！ミツと裕
太と行きたいなぁ”


ヒヨリにせがまれ三人で出かけたのは、
吹く風に秋の気配を感じる頃だったよう
に思う。






・

確信　ki→←出会い　ki

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す