罪で結ぶ絆

木漏れ日　ki ページ36

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救い出してほしかった。
この現実から逃れたくて……


助けて――……！


斑に降り注ぐ木漏れ日の中に、俺はでき
る限り手を伸ばした……







「どうしたの？可愛いね宏光くんは」


けれど触れることなどできるはずもなく
伸ばした手は…………

男の手に絡め取られた。



「やめっ……」

「怖い？僕に助けを求めても無駄だよ」


　狂気を孕んだ男の眸が俺から想い出を
奪い去り、目の前の景色は一瞬にして鉛
色に変わった。

湿潤な原生林は、太陽を阻むように高く
そびえたち、陽光を遮り……

薄暗いベールで万物を覆ってしまった。






「……っあ、痛いっ！やめてっ」

「ハァ、ハァ、いい……顔だよっ……」


痛がる演技にも、感じてるふりにも…
自己嫌悪の感情ですら、何も湧いてはこ
なかった。


俺の身体を散々自由にして、ナイフでた
くさんの傷をつけると、男は満足そうに
俺の上で果てた。





「今度裕太くんと三人で会いたいなぁ」

「玉森は勘弁してください」

「どうして？」

「トラウマを抱えているんです」


「ふぅーん……宏光くんもいいけどさ、
彼の白い肌が赤く染まるところも見て
みたいよ。金はいくらでも出すからさ」



ゲス野郎……

何度心の中でこいつを殺したかしれない




「はい今日の分。三人で会えたら倍払う
からね。じゃあ裕太くんによろしくね」

「はい……」



玉を連れてくるわけねーだろーが。

俺の身体には、あいつに付けられた鬱血
痕と赤い傷。

込み上げる吐き気に耐えながら、ポケッ
トに金をねじ込んだ。





＊ ＊ ＊





　その日の夜、ルキアに行くと玉が心配
そうに近づいてきた。




「ミツ、大丈夫？今日、あのお客さんと
　会ってたんでしょ？」

「心配すんな、大丈夫だから」

「俺、手当てするから。地下に来て」

「玉、本当に大丈夫だって」


玉に傷を見せたくなかった。



「ごめん……」


玉は、ぽつりと呟くと下を向いてしまっ
た。



「玉のせいじゃないよ」

「だけどっ！」


「あの人さ、すげぇ金持ちでチップ弾ん
でくれんのよ。俺、今は金が欲しいから
いいんだよ」

「ミツは……いつもそうやって、俺には何
も言ってくれないじゃん……傷をつけられ
てるだけじゃないんでしょ？……あいつに
やられてるんだよね？」

「玉ちゃん、何言って、」

「年上だからって、いつまでも子供扱い
すんなっ！俺だってミツを守れるしっ」



玉は唇を噛んで俺を睨みつけた。






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