トカゲ ki ページ31
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六年前の夏……
あの日のことは今でもよく覚えている。
その日は、じりじりと焼けるように太陽が照り付け、アスファルトの上で一瞬にして目玉焼きができるほどに暑い日だった。
俺は当時、母親の入院費を稼ぐ為に、ネットで知り合った女たちと寝ては金を貰っていた。
その中には人妻なんかもいたりしてさ結構気に入られて良い収入になっていたんだ。
はぁ……今日もあちーな……
渋谷の円山町の安ホテルから外に出ると、暑さで弱っていた為か一匹のトカゲがアスファルトの上で干からびていた。
そいつの死体を見ているうちに、俺は昔読んだある小説を思い出した……
父親が事業の借金を残して死に、夜逃げをして一家離散となった主人公の少年が、夜逃げ先の家の柱に釘を打った。
恋人から貰った大切な帽子を掛けるために打ったものだったが、大家の不手際でまだ電気が通っていず、夜の暗闇の中で打った釘が、翌朝、一匹のトカゲを胴体の真ん中で打ち抜いていた事に気づく……。
けれどそいつは奇跡的に死ななかった。
抜いてやろうとも思ったが、抜いた途端に血が噴き出し、死んでしまうかと思うとどうしてもできなくて――
結局彼は、柱に打ち付けられた状態の可哀想なトカゲを飼い始めた。
そいつがやった事といえば、スプーンで水を飲ませ、トカゲの餌である虫を与え――そして名前を付けた。
そうして、可哀想なトカゲと奇妙な共同生活をしていくことになる。
毎日トカゲの名を呼び、餌を与え、話しかけているうちに、いつの間にかそいつは少年のなくてはならない親友になっていく。
その小説は、主人公が自分の運命をそのトカゲになぞらえているところが興味深かったのを覚えている。
不幸な境遇……
運命という釘に打ち抜かれ、死ぬこともできずに生き続けなければならない少年。
けれど、そのトカゲの強さと生命力は、きっと彼を勇気づけたはずだ。
最後、そのトカゲがどうなったかは思い出せない。
俺もそのトカゲみてぇだな……
俺の背中を貫き、心に刺さった杭は、決して抜けることなどないんじゃないか――？
ぽっかりと空いた暗い穴に落ちていく感覚に陥る。
俺は、焼けるようなアスファルトに転がるトカゲの死体を見つめながら――
青春の若い躍動感に溢れてはいるが、どこか静謐な、あの小説を思い出していた。
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siori(プロフ) - れいさん» れいさん、初めまして。フラグの部屋は、R18指定があるので設定が必要な為コミュに登録していないと見られないのです。サイトのルールなので申し訳ないのですが年齢が大丈夫であれば登録すれば読むことは出来ます……。 (2019年9月22日 21時) (
レス) id: 25b2988e99 (このIDを非表示/違反報告)
れい - ※の続きが読みたいです。もし宜しければ見方を教えていただきたいです (2019年9月22日 11時) (レス) id: 1d3b0a592d (このIDを非表示/違反報告)
永瀬なつ(プロフ) - ※の続きの見た方が知りたいです(´･ｪ･`) (2018年12月25日 22時) (レス) id: 579642299a (このIDを非表示/違反報告)
キラみつ(プロフ) - ※の続きの見方教えて頂きたいです！！ (2018年10月18日 19時) (レス) id: 4ba300fb0f (このIDを非表示/違反報告)
m228evanescent8(プロフ) - とても引き込まれる内容で楽しく読ませて頂いてます。※の続きの見方おしえてください！ (2018年10月18日 9時) (レス) id: 834a07e579 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：siori
| 作成日時：2018年8月17日 12時
