罪で結ぶ絆

Keep smiling　ki ページ30

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心地よい微睡みの中で目覚めた。


　部屋にはスタンドライトの光だけが仄
かに灯り、まるで柔らかく暖かい黄昏時
のようだった。

あ……そうか、ここはホテルだっけ。
今、何時だ？

手を伸ばし、ベッドサイドテーブルに置
いてあるスマホを見れば真夜中の二時。

やばっ、寝ちゃったのか……

起き上がろうとした時、腹に手が回って
いることに気づく。

俺の背中にぴったりと寄り添っている柔
らかな温もり。

今でも時々疼く背中の重い十字架に、そ
の温かい頬が触れていた。




さっきまでずっと交わっていた女。

何度も何度も愛の言葉を囁きあい、激し
く求め、愛し合った。

本当に愛されているんじゃないかと錯覚
してしまいそうなほどに、俺を求めてき
た玲さん。

起きないようにそっと腕を外し、彼女の
方に向きを変えた。




「ん……」

一瞬身じろぎ、また静かな寝息を立て始
めたその寝顔をじっと見つめる。


俺より二つ歳上だっけ。綺麗で話も面白
くて、けれどいつも控えめで。頭の良い
人だって話していてわかる。


肌も透き通るように白く、爪や髪もいつ
も完璧といっていい程に手入れされてい
たから、普通のＯＬだと聞いて正直驚い
た。

彼女は春夢のように儚くて、抱き締めれ
ば壊れてしまいそうだった。






玲さんのような女が男を買うなんて……
未だに信じられない。

長い睫毛が微かに震えている。薄く開い
ている唇からは、真っ白い前歯が覗いて
いた。

どこかあどけなさの残る寝顔は、何故か
一年前に姿を消した、大切な人を思い出
させた。




玲さんて、不思議な人だな……


身体中に傷があって、しかも背中には十
字の彫り物。得体の知れない俺みたいな
男と寝るなんて。

身体を見せたら尻込みするかと思ってた
から正直驚いた。

しかも……店の地下でならまあわかるけれ
ど、こんな密室に二人っきり。何かあっ
ても助け呼べないよ？

俺、そんなに良い奴じゃないけど？









「無防備すぎない……？」



柔らかな髪を撫で、俺はそっとベッドか
ら抜け出すと、さっき外したネックレス
を首にかけた。






“Keep smiling”

(笑顔を絶やさないで)







彫られた刻印を見つめ、そっと、その冷
たく滑らかな表面を指で撫でる。





煙草に火を付け紫煙を細く吐き出した。




あれからもう一年か……

もう、俺たちのことなんて忘れた？

連絡がないからとても心配してる。







ヒヨリ……

なぁ……今どこにいんだよ？





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