罪で結ぶ絆

理由 ページ19

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　会話をしながらホットワインを飲み終
えたところで、店の奥から歩いて来る一
人の男性に目が留まった。

彼は真っすぐ私のところまで来ると、丁
寧に頭を下げた。





「初めまして、この店のオーナーの黒川
　です」


この人が……


　黒いドレスシャツにジャケットを着た
短髪の男性だった。日焼けした顔でにこ
やかに笑う彼は３０代前半くらいに見え
る。

整った顔に光を留めた目。きっとやり手
なんだろう、彼からは只者でないオーラ
を感じた。



「石井さまからお話を伺っております。
　二階で伺いますのでどうぞこちらへ」

「はい……」



　ひろと裕太の視線を痛いほど感じ、彼
らを見ることが出来ない。


私の行動に、きっと驚いているよね……









「いつもお越しくださりありがとうござ
　います。楽しんでくださってますか？」




　店の二階の応接室のような部屋で、黒
川さんは名刺を差し出しながら感じの良
い笑顔を向けた。

ふわりと沈むソファは高級な物だ。



「はい」


彼はにこやかに笑うと話を続けた。


「石井さまから聞いてらっしゃると思い
　ますが、今から説明いたしますので」

「はい」

「それにしても、若くて綺麗な方だった
　ので、少々驚いてます。その……会員
　様はどちらかというと、色々抱えてら
　っしゃるご年配の方が多いので……」



黒川さんは言いにくそうだ。



「お金ならあります……」

「すみません、そういう意味ではないの
　です。会員制ボーイズクラブとは、所
　謂、男娼を買うところです。あなたの
　ような女性には必要ないのではないか
　と思っただけですよ。失礼いたしまし
　た」



彼は、深く頭を下げた。



「いえ、いいんです」

「差し支えなければ、理由をお聞かせい
　ただけますか？」

「理由？」

「はい、男娼を買う理由です。もちろん
　秘密を漏らすようなことは致しません
　から」




突然された想定外の質問にドキリとした。




まさか、妹の復讐のために、背中に十字
の傷がある男を探しているんです。な
んて言うわけにはいかない。


私は、自分が水商売をして生きてきたこ
と、ストレスが溜まり上手く発散できな
いでいることなどを尤もらしく彼に話し
た。




「なるほど、わかりました」




どう思ったかわからないが、彼は頷き、
私をじっと見つめた。

心を見透かされそうなその強い眸に、
思わず目を逸らしたくなるのを何とか
堪える。







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