検索窓
今日:3 hit、昨日:8 hit、合計:379,400 hit

生きる理由 ページ8








 私たち姉妹を引き取る羽目になった親
戚夫婦に、全く感謝していないわけでは
ない。

 彼らだって私たちのせいで生活が一変
してしまったことに変わりないから。今
なら、彼らの心境を理解することが出来
る。

 

 高校生になり、私はバイト代の中から
数万円をおばさんに渡していた。私たち
二人の生活費にするには少ない額だった
かもしれないが、それが私にできる精一
杯だったし、父が残した遺産も少しはあ
ると思っていたからだ。


 ある日、思い切って私は、遺産がどう
なっているのかを訊いてみた。



”もう殆どないですよ。洋服代だって、
 学費や食費だって、あんたたちが使う
 金額が一番多いんだから”


本当にないのだろうか?







 誰にも相談できずにいたが、自分なり
に調べ、遺族年金や生命保険のことを知
った。

 当時高校生になったばかりの私にとっ
て、遺族年金や保険金という言葉は耳慣
れない言葉であり、そのようなものがあ
る事も知らなかったんだ。



 年金の事を訊くと、おばさんの顔色が
変わり、きちんと管理しているから子供
は心配するなと言われた。眉間に皺を寄
せ、明らかに不機嫌になる彼女。


 この時、私たちの後見人になっていた
彼らが、本来は私たちに入るべきお金を
当たり前のように受け取り、使っている
のではないかという疑念が芽生えたが、
誰に相談していいかもわからなかったし


 これ以上彼らの機嫌を損ね、もしこの
家を追い出されたら、私たちはきっと施
設に入るしかないだろう。


 そう思うと無力な自分が悔しかった。
悔しくて身体がカァっと熱くなったのを
今でも覚えている。



”私もバイトを増やして、もっと家にお
 金を入れますから、ヒヨリにもう少し
 良い暮らしをさせてあげてください”


 大人を前にして、世の中の事を何も知
らない、まだ16になったばかりの私に
はそれだけ言い返すのが精一杯だった。






 人間は自由で平等だし、人の命や身体
は売買をしたり価値を測ったり、比べた
りするようなものではない……。


 けれどまだ若くて、精神的にも未熟だ
った私は、お金のために身体を売ること
を選んだ。




 私にとっては、自分がお金で買われる
という事実なんて……

そんなことはどうでもよかったんだ。



 毎日必死だったあの頃。可愛い妹の笑
顔だけが私の生きる理由になっていた。









罪の値段→←救い



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (709 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1590人がお気に入り
設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

siori(プロフ) - れいさん» れいさん、初めまして。フラグの部屋は、R18指定があるので設定が必要な為コミュに登録していないと見られないのです。サイトのルールなので申し訳ないのですが年齢が大丈夫であれば登録すれば読むことは出来ます……。 (2019年9月22日 21時) (レス) id: 25b2988e99 (このIDを非表示/違反報告)
れい - ※の続きが読みたいです。もし宜しければ見方を教えていただきたいです (2019年9月22日 11時) (レス) id: 1d3b0a592d (このIDを非表示/違反報告)
永瀬なつ(プロフ) - ※の続きの見た方が知りたいです(´・ェ・`) (2018年12月25日 22時) (レス) id: 579642299a (このIDを非表示/違反報告)
キラみつ(プロフ) - ※の続きの見方教えて頂きたいです!! (2018年10月18日 19時) (レス) id: 4ba300fb0f (このIDを非表示/違反報告)
m228evanescent8(プロフ) - とても引き込まれる内容で楽しく読ませて頂いてます。※の続きの見方おしえてください! (2018年10月18日 9時) (レス) id: 834a07e579 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:siori | 作成日時:2018年8月17日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。