ＪＥＷＥＬ

ＫＩＳＳの記憶 ページ47

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あー、びっくりした。


　太輔に押さえつけられて、まだ心臓が
ドキドキしている。

始めて来た太輔の部屋……

　ぐるりと部屋を見渡してみると、太輔
の部屋は彼らしいモノトーンのインテリ
アですっきりとまとめられていた。生活
感がない部屋……きっと会社に泊まる事
も多いんだろうな。



　浴室からシャワーの音が聞こえてくる
ズキズキする頭を押さえ、私は記憶を手
繰り寄せた。





記憶がない間、きっと迷惑かけたんだ。



　お酒には強かったし、記憶がなくなる
なんて始めての事だった。北山さんの事
や、インタビューの失敗でヤケ酒しちゃ
ったんだ私……。きっとバカみたいに強
いお酒を飲んだのかもしれない。


いい歳してみっともない……。

本当に自己嫌悪。









　太輔の言う通り。本当に私って、世話
の焼ける女だよね、太輔が出てきたら謝
ろう。



”まったく世話の焼けるヤツだな……
　ほっとけないんだよ”



　その時、途切れ途切れだけど、太輔の
声と共に唇に温かいものが触れた記憶が
甦ってきた。


え……っ

　もしかして私……太輔にキスされた？
それとも私が太輔の唇を奪ったとか？い
や、いくら私でもそんな事をするはずは
ない――。




私は唇に手を当てた。



　まさかね……、あの太輔が私にキスす
るなんて思えない。太輔が何もないって
言っているのに、私にキスした？なんて
聞けるはずもなく

私はモヤモヤした気持ちを押し殺した。







「お、完全に起きたな」


　濡れた髪をタオルで拭きながら、太輔
が戻ってきた。



「太輔……、迷惑かけてごめんね」

「迷惑とも思ってないけど。コーヒー飲
　む？」

「……うん、ありがとう」

「洗面所使っていいよ、シャワーも浴び
　たければどうぞ」



　私ってば昨日は化粧も落とさずに寝ち
ゃったんだ。きっと酷い顔に違いない。





「洗面所だけ借りるね」


　案の定、鏡に映った私の顔は疲れきっ
ているように見える。手首につけていた
ゴムで前髪を結び顔を洗おうとした時だ。





「洗顔フォーム、俺の使って。あっ……」


　太輔がやって来て、私のおでこをじっ
と見ている。


「太輔？」

「あ、ごめん。俺、おでこのうぶげめっ
　ちゃ好きなんだよ」




　ひょいっと手が伸びてきて、私のうぶ
げを優しくチョロチョロと触ると、フッ
と笑って出て行った。








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