42.ある日本画家 ページ42
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月曜日、会社に着くなり藤ヶ谷さんを捕まえた。
「藤ヶ谷さん、北山伊織さんと親交の厚かった人って分かります?」
「何だよいきなり」
昨日飲みすぎたのか眠いのか?藤ヶ谷さんは思いっきり不機嫌な顔になる。
「ちょっと知りたくて」
「何考えてんだよ?」
「引きこもりの原因です」
そう言うと、首を傾げ、私を凝視してからニヤリと笑った。
「日本画家の五本木宗一郎かな」
五本木宗一郎……
いきなりのビッグネームに一瞬ひるむ。
「どこに住んでるんですか?」
「確か、神奈川県の葉山町だよ」
「葉山町……」
よし!余裕で行かれる距離じゃない。
「桐谷、話してくんない?」
「私、北山伊織の本を買ったんです。そうしたら伊織さんて、万葉集を好んで多く書いているんです。北山さんの引きこもりの原因は伊織さんで間違いないと思っています。親交の厚かった五本木先生なら何か知ってるかもしれないし、世に出てない伊織さんの書を持っているかも……私、伊織さんの心の風景が和歌に隠れているような気がするんです。だって自分だったらやっぱり心を動かされた和歌を書きたいって思いますもん。だから話を訊きたくて、」
「もう桐谷じゃないよね、担当」
藤ヶ谷さんは、じっと私の話に耳を傾けていたけれど話を遮られてしまった。それを言われると辛い。
「すみませんっ、だけど何か分かれば佐伯さんだって助かるかもしれないですよ」
「本当はそんなこと思ってないだろ?北山さんのため?」
「え?」
「違う?」
「あの……それは……」
ほらまた……藤ヶ谷さんのその視線に、心の中が見透かされてる気がするよ。さすが鬼……否、藤ヶ谷さん。
「まあいいや、自分の仕事に穴を開けないようにほどほどにしとけよ」
「はい」
「俺、一度五本木先生と仕事したことあるから後で連絡先を教えてやるよ。先生には中原書房の藤ヶ谷から聞いたって言えば分かると思う。穏やかな良い人だから」
「ありがとうございますっ!」
うう、藤ヶ谷さーんっ、ありがとうございます!
若干、いや、かなり……ドSですけど、鬼のわりには優しいし凄く頼りになる上司だと思ってますから!
私は心の中で何度もお礼を言った。
そしてその日の午後、佐伯さんとニカと私は北山さんに挨拶に行くことになったんだ。
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siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、お返事遅れてごめんなさーい!また来てくださったなんて感激です!星も嬉しいです。また書道やってほしいですね! (2021年3月3日 19時) (レス) id: ad892650f9 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 久しぶりに書道家の北山さんに会いたくなって来ました。いいね☆していなかったみたいでごめんなさい!右☆をポチッとさせて頂きました! (2021年3月1日 0時) (レス) id: a0721de2a5 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさーん!お待たせしました!パス付きの方は夜には外せると思います!遅くなってごめんなさい! (2020年7月5日 16時) (レス) id: 05c0397959 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - ありがとうございます。明日明後日にはと仰っていたのでずっっと楽しみにしていました!これから読めるのが楽しみです。 (2020年6月5日 1時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、お待たせしましたー!2のパスワードを外しましたのでお知らせします。大好きと言って下さり感無量です!涙 (2020年6月5日 1時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:siori | 作成日時:2016年6月4日 13時