41.三日月 ページ41
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「……びっくりさせてごめん」
「いいえ……北山さんが女性恐怖症になった原因ですか?嫌だったら話さなくていいですから」
「多分それがきっかけではあると思う」
北山さんは眉間に皺を寄せ、何とも言えない複雑な表情をした。少しの哀しみを伴って。
「俺の親父はね、家に女を連れ込むことがたま
にあってさ……中学の時に部屋で寝てたら酒に酔った親父の女が俺の部屋に入ってきて。まあ……色々されたんだよ、言えないような事。俺、あまりに驚いて動けなかった」
「そうだったんですか」
「その時の、香水と煙草と酒の入り混じった匂いは今でも忘れないよ」
そんな過去があったなんて……
思春期に性的虐待を受けたら嫌悪しかないと思う。
「それから親父の女だけじゃなく、女が怖くなったっていうか嫌になった。俺が有名になったら近寄ってくる奴もいたよ。だけど女性恐怖症って言えば近づいてこなかったから便利だった。多分、今はだいぶ良くなってるよ。ただ、相手からいきなり掴まれたり急に近寄って来られるとダメ」
「北山さん、私なんかに何故話してくれるんですか?」
「何でだろね……でも俺、桐谷さんは大丈夫だから。まあ、それが言いたかったんだけどね。自分でもよく分かんないわ」
今日は風があるせいか、カーテンがゆらゆらと揺れている。私達はしばらく何も話さないで静かに飲んでいた。
そろそろ終わりかな……
「風花なくなっちゃいましたね、そろそろ帰ろうかな。この瓶いただいてもいいですか?瓶も綺麗だし北山さんの書が好きだから飾っときます」
北山さんは少し笑っただけだった。
*
眠れない。
何度も寝返りを打つ。
どうやら考え過ぎて目が冴えちゃったみたい。仕方がないので、先日買った北山伊織の本を手にした。
ページを捲る。
へぇ……万葉集か……
伊織さんて、結構和歌を書いている。伊織さんが気に入った和歌なのかな?崩しすぎていて読めそうになかった。
二人に何があったかは分からない。
北山さんは伊織さんに嫌悪感を抱いているように感じたけれど本当の親子だもん。
お父さんは北山さんを愛していたはずだ。
伊織さんはもうこの世にいないから、今から分かりあうことはできない。
けれど、そうだ。
伊織さんと親交の厚かった人は誰だろう?もし話が聞けたら……何か分かるかもしれない?
しばらく読んでいたら睡魔に襲われて、次に気づいた時には外が白み始めていた。
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siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、お返事遅れてごめんなさーい!また来てくださったなんて感激です!星も嬉しいです。また書道やってほしいですね! (2021年3月3日 19時) (レス) id: ad892650f9 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 久しぶりに書道家の北山さんに会いたくなって来ました。いいね☆していなかったみたいでごめんなさい!右☆をポチッとさせて頂きました! (2021年3月1日 0時) (レス) id: a0721de2a5 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさーん!お待たせしました!パス付きの方は夜には外せると思います!遅くなってごめんなさい! (2020年7月5日 16時) (レス) id: 05c0397959 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - ありがとうございます。明日明後日にはと仰っていたのでずっっと楽しみにしていました!これから読めるのが楽しみです。 (2020年6月5日 1時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、お待たせしましたー!2のパスワードを外しましたのでお知らせします。大好きと言って下さり感無量です!涙 (2020年6月5日 1時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:siori | 作成日時:2016年6月4日 13時