素敵帽子と私の恋物語【中原中也】 (ページ8)

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8…ポートマフィアページ8

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『妬いてません！』

中也さんは私が妬いてるのを判って「そうかそうか」と云った。

『ニヤけないで下さい。気持ち悪いです』

「誰が気持ち悪いだよ」

『今人車を運転しているちびっこマフィアさんです』

「誰の事かなァ？」

『…さァ』

少し中也さんの目が恐くなったので此れ以上は辞めておこう。うん。

ふと、窓の外を見てみると…

『あっ！』

「あ？」

彼の人、何処かで見た事有る様な……

「げ」

『？如何かしましたか？』

「此の世で一番会いたく無い奴を見つけてしまった」

彼の人の事だろうか……。

中也さんは早く視界から其の人を消したいのか、人車の速度を上げた。

然し、運悪く信号が赤になってしまったのだ。

「チッ」

…あ。思い出した。

『彼の人から前に一度心中に誘われました』

「あ？心中？…彼奴にか？」

『はい。可憐なお嬢さん…如何か私と、的な』

「…太宰、絶対死なす」

…成る程。其の心中に誘われた人が太宰治と云う人なのか。

折角格好良いのに…心中に誘うなんて変な人だ。

『あ、太宰さんで思い出したんですけど…』

「其の名前を出すんじゃねェ」

『……面倒臭い人ですね』

「何か云ったか？」

『いいえ何も』

…太宰さんの事そんなに嫌いなんだ。何か昔有ったのかな？

…まァ良い。今は其んな事よりも_____中也さんの仕事についてだ。

『中也さんの仕事について教えて下さい』

中也さんは憶えてたかとでも云う様な顔をした。…そりゃあ、憶えてますよ。

中也さんは私の方をチラリと見て云った。

「…其んなに話せる内容じゃ無ェんだけど」

『…』

「…ポートマフィアってのは簡単に云えば闇組織だ。数十を超える傘下の団体を抱えている。

保護した企業や商店からの上納金、買い付けた密輸商品での非合法商売、麻薬売買や闇カジノなどを財源に街を闇から取り仕切っている。

其して_____人を殺したりもする。」

……人を？

以前、私が夜中、中也さんの家に勝手に押しかけた事が有った。

其の時…少し鉄臭かった。生臭いと云うか…。

其れは…中也さんが仕事で殺した人の血か何かだったのか。

『…其の様な仕事をしていたんですね』

「…俺の事…恐くなったか？」

『え？』

中也さんの方を見ると少し悲しそうな顔をしていた。…そう云う事か。だから話したく無かったんだ。

…私は其れを聞いたとしても貴方を好きなのには変わりないと云うのに。

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