2.きょうだい ページ3
「ご、ごめんってぇ〜……」
「俺、すげー歩きまわったんですけどお」
居場所を伝えるのを忘れたことすらすっかり忘れて、ふらふら城内を歩いていたとき。見るからに不機嫌です、って感じの兄につかまってしまった。これは間違いなくデコピンだぞとふるえながら兄について行くと、案の定怒られた。デコピンはいやだデコピンはいやだと思いながら謝りたおしてはいるものの、まだ機嫌がなおるようには見えないので、デコピンを受けるしかないのかと諦めかけていたりする。
「うっ、うっかりだったんだよぉ……って、いたい!」
「嘘つけ、そんなに強くしてないだろ」
「えへへ、ばれたぁ?手加減してくれるあにさまやっさし〜い!」
素敵!とか、あにさま世界一!とかってとりあえず褒めると、兄はだんだん機嫌をなおして、貢ぎ物の桃を食べはじめた。おそれていたデコピンもそんなに強くなかったあたり、私に甘いなって。愛よね!甘やかされてる感じがするので、嫌いじゃない。
にやにやとご機嫌そうにしている兄へ「お布団が汚れるから寝台から降りて食べようよ」と声をかけても、めんどくさいからと一蹴されたどころか、「ラビアも食うか?」と桃をすすめてきた。桃に関してはお散歩するからと遠慮して、後ろに控えていた人に指示を出す。
「神官さまのシーツ、あとから洗っていただけますか」
「はい」
「──それじゃああにさま、私は少し散歩してくるからぁ」
「おー」
どこを歩こうかと考えながら扉のほうを向くとき、片手をひらひらと適当に振る兄が視界の端に映った。それがなんとも嬉しくって、笑みをおさえきれないまま手を振り返す。今日はきっといい日ねと思いながら、「いってきまぁす」と一言のこして部屋を出た。
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作者名:織叶 | 作成日時:2019年1月13日 2時