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1.私のだいすきな、 ページ2

「あにさま〜!あにさまぁ、どこにいるの〜!?」

玉艶さまから兄を呼ぶように言いつけられて、なんの用事かも知らずに城内を歩き回る。……今日はせっかく、紅玉のところへ行って遊びに誘おうと思ってたのに。偶然玉艶さまの前を通りかかってしまった自分の不運は呪いたくもなった。なぜかって、兄は見つけにくいのだ。いつも高いところやへんてこなところにいるから、どうやったって見つからない。これだけ時間がかかってるならもうしばらく探さなきゃいけないだろうし、そうしてるうちに紅玉もおけいこが始まってしまうよなと肩を落とした。

このお城は随分と広いから、何年過ごしたってやっぱり慣れない。今でも日が暮れ始めたらときどき、暗いせいでどこにいるか分からなくなってしまうことがあったりするくらいだもの。そろそろ疲れてきたし、今さら見つけても紅玉とは遊べないし、いっそ探すのを諦めてしまおうかなあと思いつつ、曲がり角を曲がったその先で。あたたかくやわらかな日の射す庭の木に寄りかかって、ぐっすりと眠っている兄を見つけた。

「あにさま!こんなところにいたぁ。ね、起きてよう、玉艶さまが呼んでたのぉ!はやく〜!」
「……」
「ちょっと、あーにーさーまー!ほら起きてぇ!二度寝しないで!」
「ん……ん〜?───なんだ、ラビアかよ」
「ラビアかよぉ、じゃないの!玉艶さまが呼んでるんだってばぁ!」

「玉艶〜?」めんどくせーなという顔を隠そうともせず、兄は眉間に皺を寄せた。うげ、と下がった口角や右だけ細められた目を見れば、ノリ気じゃないのなんて一目瞭然だった。それを指摘するとうるせーってデコピンを食らうことは学んだので、声には出さずに黙る。

「玉艶さま、来なかったらきっと怒るわよぉ。わたし、巻き添えで怒られたくないわ」
「あーあーわかったよ……行ってくる」
「はぁい、いってらっしゃ〜い!」

頭をかいてだるそうに歩く兄を見送ってから、はたと気がついた。そういえば、自分は兄に玉艶さまのいる場所を教えただろうか?思い返した会話の中でそれっぽいことを言った記憶は……ない。

「あ〜、うっかりぃ。あにさま、怒ってないといいなあ」

教えられてないことに気がつきませんようにと願うしかなかった。後からデコピンされたくないもの。

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作者名:織叶 | 作成日時:2019年1月13日 2時

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