第二十七話 責任取れよ ページ28
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「あ、逃げちゃった」
ダッシュで逃げていった彼女の姿を見つめる。若い子って元気だなあ、なんて森鴎外は呑気に思った。
「裏から行こうか。エリスちゃんも一緒に来る?」
「面白そうだから行くわ」
首領しか知らない秘密の抜け道。其処を使えば相手に気付かれずに途中まで降りることが出来るのだ、本来は自分の身に危機が迫っている時に利用する物だが。
「体調は大丈夫そうなの?」
「うん、全然平気みたいだね。欲 情も抑えられてきた」
並のΩならこうは成らない。それもこれも
「私が欠陥しているからなんだろうけど」
森鴎外は第二の性が判明した時、「死んでやろうか」なんて思った。まだ差別が激しかった時代、Ωは居るだけで奴 隷の様に扱われた。そんな人間になるなら、いっそ自分で首を掻き切ってしまいたかった。体内にあるΩの器官を取り除いてみようか、と考えた事も在る。其れを実際にやった男が居て、其の男は手術後に原因不明の死を遂げた。自分もそうなると考えると、やる気にはなれなかった。
幸いΩとしての本能が通常より遥かに欠如していたのに加え、抑制薬を飲み続けていたのが効いて俗に云う「欠陥Ω」と成る事が出来た。これならば「運命の番」とやらに会っても、Ωとしての自分を表に出すことは無い───そう思っていた。
然し、突如として現れた自身の運命の番。いざ目の前に立つと隠す事は出来なかった。
「まぁ、こう思うのはΩとして如何なんだろうとは思うよ」
一般的にΩはαに「守られたい」と思う。だが、森鴎外は逆に彼女を「虐めたい」と思った。云ってしまえば、小学校高学年あたりの思春期男子が好きな女子を虐めたいと思うのと同じである。大切にしたいと思いつつ、グチャグチャになる迄虐めたい。矛盾しているが隠すつもりは無い。
却説、彼女は今頃一回へ辿り着いてしまっているだろうか。昇降機のボタンを押しながらそう考えた。
「責任は取ってもらわないと」
チーン、と云う音と共に扉が開く。
その中に居たのは、座り込んでいる彼女だった。
「おや、案外早く見つかったね」
「イィヤァァァァァ!!!」
片手で耳を抑えつつ、フェロモンを一気に出して彼女を気絶させた。完全に使い方を間違っている気がする。
此処まで嫌がられるとは……と森鴎外はしょんぼり顔になった。
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Gal - 魔人ガーZ…なんかあったな、そんなの。ガンダムみたいな奴… (4月27日 19時) (レス) @page45 id: 6203c50de1 (このIDを非表示/違反報告)
サラミザラ(プロフ) - お二人共コメント有難うございます!!真逆そこに触れていただけるなんて……(笑) (3月4日 14時) (レス) id: 1a675fd086 (このIDを非表示/違反報告)
零奈(←履歴を消したバカ)(プロフ) - 瑞穂さん» 同じく!! (3月3日 23時) (レス) id: b9e38a5313 (このIDを非表示/違反報告)
瑞穂(プロフ) - 物語に関係ないけど、魔人ガーZ好きです (3月3日 23時) (レス) @page45 id: 18f9935b97 (このIDを非表示/違反報告)
サラミザラ(プロフ) - graply12さん» 私チョロいのでその言葉信じちゃいますよ……??良いんですね!?!?コメント有難うございます!!公開するのはいつになるかは分からないんですが、書き溜め作っときますね……! (3月2日 22時) (レス) id: 1a675fd086 (このIDを非表示/違反報告)
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