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15、夜風 ページ17

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「いやぁ〜、偶にはこういうのもいいものだ」

「…そうだね」


花火が終わった頃に観覧車から降りた。

なんと夢見心地な空旅だったのだろう。
私と彼女は互いの気持ちを共有して、触れて、存在を確かめた。

未だに残る彼女と繋いだ手の熱にしみじみと、愛おしさを噛み締める。
彼女にぶたれた頬の痛みさえも________。


△▼△


「好きだよ、Aちゃん。
私にとっても、君は運命の人だ」

「えっ、ちょっ…?!治くっ…_____!」


観覧車の中、彼女の告白と自分の気持ちを明かしたことで、私は有頂天になっていた。

彼女の赤く染まった頬をとって、自身の顔をゆっくりと近づける。涙目になって狼狽する彼女など、気に止める余裕などなかった。


「やめてっ!!」

「ぶっ?!」


彼女の唇まで残り1センチもない距離になった瞬間。
私は彼女の強烈な平手打ちを食らった。

思わぬ衝撃に驚く刹那、彼女は起立して一気に私から距離を取って怒鳴りはじめる。


「不純!破廉恥!変態!馬鹿ぁっ!」

「えぇ…。今いいムードだったのに」

「きっ、きききき接吻だなんて!
敬虔で清らかで純粋な修道女がしていいわけないじゃない!!」

「それ自分で言う?」


ううっ、と唸りながら涙目ながら怒り狂う彼女は、不憫ながらも可愛いと思ってしまったのは、ここだけの話だ。

それから彼女は、今に至る帰り道までふくれっ面になってしまったのである。
遊園地に出てからも彼女は何も言わず、顔も合わせようともせず、私よりも先にせかせかと歩いた。


「ごめんね、君があまりに魅力的でつい」

「……。」

「ほらこの通り〜!反省してるからさ。そろそろお顔見せてほしいな?」

「……。」

「Aちゃん?」


無言で歩いていた彼女は、私のしつこい弁明に痺れを切らしたのだろうか。若干肩を落として様子で態度が変わった。
そして溜息を吐いてから弱々しく、あのね。と呟く。


「…接吻は、本当に良くないの。
そもそも、神様のもとで生きる修道女にとっては、男女との関係が穢れと見做されて禁止されているから。

でも…、私が修道女じゃなくなったら、いいのかな?」


漸く振り返ってくれた彼女の微笑みは儚く見えた。
どうしてなのか、その柔らかい表情を見ていると心配になってくる。
とはいえ、彼女が私と同じ気持ちを抱いてくれていることの嬉しさが勝る。私も釣られて微笑んだ。


「うん、私はいつでも君を待っているよ」


冷たい夜風が私達の間を不気味に通り抜けた。

16、君を迎えに→←14、その気持ちの名前は



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ラザニア太郎(プロフ) - もちうさぎさん» もちうさぎさん、はじめまして。コメントありがとうございます^ ^可愛いと言っていただけて何よりです!そうですね…!修道服、もといシスターの着ている服を参考にデザインしました。ここで画質が悪いのが残念ですが、Twitterにも掲載しますので宜しければご覧ください (2022年11月11日 17時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ(プロフ) - 服が可愛いしシスターって奴だよね! (2022年11月11日 16時) (レス) @page4 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2022年11月9日 16時

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