16、君を迎えに ページ18
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翌日、また例の橋梁にて彼女を待つ。
昨日は何とも夢みたいな一日だった。
接吻ができなかったのは非常に残念だが、彼女との同意があってこそ真の幸福が得られるであろう。今後の進展に期待だ。
それに恥じらう彼女を沢山見ることができた。それだけで満ち足りたといっても過言ではない。
そして何よりも、彼女と同じ気持ちでいたということが嬉しくてたまらない。
どうやら私は、思っていた以上に彼女に惹かれていたらしい。
今こうして彼女を待つ時間が苦しいのだ。だが不思議なことに、その苦しみから逃れる為に死を選択することが、僅かながら躊躇いを感じるようになった。
死ぬくらいなら最期に彼女に会いたい。願わくば、彼女と共に死にたい。
その一心で彼女を待ち、会ったら会ったで彼女とずっと話しているうちに死という選択を忘れている。
我ながら可笑しい話だ。自 殺マニアを謳っておきながら、一人の女性の出現でこんなにも意思が狂わされてしまうとは。
そんな自分に自嘲する。
「来ないなぁ…」
どのくらい待ったのだろう。明確に数えてはいなかったが体感では数時間は経過している。
待ち合わせ時間は決めていなかったが、何となく昼間には来ると暗黙の了解だったのだ。なのに、もう太陽は南中から東に30度程度傾いている。
ここまで遅いのは初めてだ。
「_____…あぁ、そうだ!私が迎えに行けばいいのか」
この妙案に思わず手を叩いて声が出てしまった。
修道院の場所はもともとわかっているし、なんなら昨日彼女を近くまで送ったのだ。
行き違いになる可能性もあるが、彼女を待ち焦がれているだけはもううんざりだ。となれば、私自ら行動する他ない。
これから冒険するかのような高揚した気分の足取りで、私は橋梁から離れていくのだった。
△▼△
歩くことおよそ30分。漸くといったところか、修道院の前まで来た。
そこそこ年代が経っているような建物だった。
黒い格子で作られた門扉はさびれており、純白であったであろう外壁は茶色く薄汚れている。
とはいえ、庭木がきちんと手入れされているらしく、そのおかげで雰囲気は悪くない。
屋根の頂上にある大きな十字架こそ、荘厳に聳え立つさまが良い。
ここに、彼女が住んでいる______。
そう思うと胸が高鳴って堪らない。
彼女がまだ院内にいることを願いながら、鍵のかかった門扉を軽々と越えて敷地内に侵入した。
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ラザニア太郎(プロフ) - もちうさぎさん» もちうさぎさん、はじめまして。コメントありがとうございます^ ^可愛いと言っていただけて何よりです!そうですね…!修道服、もといシスターの着ている服を参考にデザインしました。ここで画質が悪いのが残念ですが、Twitterにも掲載しますので宜しければご覧ください (2022年11月11日 17時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ(プロフ) - 服が可愛いしシスターって奴だよね! (2022年11月11日 16時) (レス) @page4 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2022年11月9日 16時