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プロローグ「追憶の始まり」 ページ1

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拝啓 私の知らない愛しの君へ


私と君が出逢ったのはいつだっただろうか。

私が君に入水することを止められたのは何度あっただろうか。

私が君に恋をしたのはいつだっただろうか。

私は君の笑顔に何度この世に希望の光を見出したのだろうか。


ずっとずっと、君のことを想っては虚しくなる。
これだけ君を思うのに、私は君の声も髪の色も、顔さえも何一つ思い出せない。


只々、空虚になり途方に暮れたこの心に救済を求めて今日もあの橋梁に訪れる。

名前も顔も知らない君に、恋焦がれてどのくらいの日が経ったのだろう。

そして今日も、君に会えなかった。



橋梁の柵を越えて、大きな河川に身を投げる。


君は私に“死ねない意味”を与えてくれた、気がする。
だがもう二度と会えないのなら、この生に意味はない。


______嗚呼、なんと美しい夕陽なのだろう。
君も綺麗だと、瞳を輝かせながらそう言ってくれるに違いない。


地平線から漏れる眩しくて温かい光に包まれた刹那、凍えるように冷たい川水を体全体に浴びる。

それはまるで、天国から地獄に落ちるように。


______今日こそは君のいない世界から、私が消えますように。


そう願いながら、私は今日も地獄へ向かう。



△▼△



拝啓 死を望む愚かなきみへ


きみがこの世に意味を見出せず、勝手に死に行くことは許しません。

それは生を与えてくださった神様に反する行いだから。

神様は地獄に行かせるために、人に生を与えてくださったわけではない。

だからきみは地獄なんて行きません。行かせません。

いつまでも死に執着し、飄々と入水する君を許しません。


私はきみを救済する。


生きる意味など見出す必要はないと思う。
だけどそれは、死ぬ意味を見出していいことにはならない。


だから私はきみに、神様の名の下に“死ねない意味”を与えます。

それをまだきみに伝えられていない。
未だ川に飛び込む危なっかしいきみに、早く伝えたい。


___________だから、どうか。
どうか、この世界から消えた私のことを、早く思い出して。

1、日和の河川にて→



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ラザニア太郎(プロフ) - もちうさぎさん» もちうさぎさん、はじめまして。コメントありがとうございます^ ^可愛いと言っていただけて何よりです!そうですね…!修道服、もといシスターの着ている服を参考にデザインしました。ここで画質が悪いのが残念ですが、Twitterにも掲載しますので宜しければご覧ください (2022年11月11日 17時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ(プロフ) - 服が可愛いしシスターって奴だよね! (2022年11月11日 16時) (レス) @page4 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2022年11月9日 16時

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