三十一話 ページ33
「……死んだ?」
「はい、詳しい事は聞き取れなかったんですけど新しい受け入れ先で亡くなったと……。」
「ふぅん、『死んだ』ねぇ……。」
与謝野は敦の話に顎に手を添えて首を傾げる。与謝野のその疑惑の目に敦は恐れながら聞いた。
「あの、何か可笑しなところでもありましたか……僕の話。」
「いいや、特にないさ。まぁそれより敦、その手元の紙が何の書類だか解るかい?」
その言葉に敦はもう一度書類へと目を落とす。
よく解らない単語の羅列に彼は出来るだけ読み解こうとする。
「……名前、年齢、性別、身長、体重、視力、聴力、筋肉量、脈拍、肺活量、脳波数、赤血球量、骨格量、IQ……他は……難しくて解らないです。これは一体……?」
「……それはね ____ 」
敦の右頬に一筋の汗が伝う。
その伝う時間がやけに長く感じられた。
「 ______『実験体』としての樫原Aのデータだよ。」
「……え?」
「実験体」という言葉の響きが敦の中で不協和音となって弾ける。いくらその言葉を噛み砕こうとしてもうまく出来ず、そのまま呑み込んでしまいそうだった。
「実験体……え、何で……じっけん…。」
「まぁ、理解できないのも解らなくはないよ。
そう言って与謝野は椅子から立ち上がり敦から書類を受け取る。
敦はただ呆然としているだけだった。
「え……彼女が…何で?いや、そもそも彼女は死んだ……与謝野先生、一体……!」
「落ち着きなよ、今からそれを説明するンだから。」
酷く動揺している敦に与謝野は頭をグシャグシャと掻き回した。それでも敦はただ、呆気に取られた表情をするだけであった。
ここで、ふと敦は問いを口に出した。
「そういえば……国木田さんは?賢治君は?あ、あの二人は無事なんですか!?」
「全くアンタは騒がしいね。動揺しすぎだよ。それで、あの二人なら大丈夫だよ。もうとっくに目を覚まして今回の件について調査にいってるよ。」
「よ、よかった……。」
ほっ、と敦は胸を撫で下ろす。
善い情報が耳に入ったお陰か、少しは落ち着きを取り戻す。
だが、まだ安堵は出来ない。
「それで……その『実験体』とは一体どういう……。」
「話すよ、話す。アンタが全然妾の話を聞こうとしないからこのまま帰ってやろうかと思ったよ。」
「す、すみません…。」
______ 与謝野の話はこうだった。
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夏蜜柑(プロフ) - さけられるチーズさん» コメントの返信が遅くなってしまいすみません。応援ありがとうございます。これからも頑張って書き続けますのでよろしくお願いします(^^) (2016年5月2日 17時) (レス) id: 4b1740a2d9 (このIDを非表示/違反報告)
さけられるチーズ(プロフ) - これからどう芥川さんにいくか気になります!♪( ´▽`) 更新頑張ってください! (2015年7月3日 19時) (レス) id: 26b822a438 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 中矢さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。期待に答えられるよに書いていきますのでこれからも是非よろしくお願いします。 (2015年5月5日 22時) (レス) id: 61e9595a71 (このIDを非表示/違反報告)
中矢(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。私も原作読んでます。いいですよね!続き頑張ってくださいね! (2015年5月3日 19時) (レス) id: 7f7dd8e1cd (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 禁煙Dutchさん» ありがとうございます。更新を頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2015年3月29日 21時) (レス) id: 9f8193b493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2015年3月20日 20時