三十話 ページ32
「やっぱり、何か知ってるんだね。」
与謝野の問いかけに敦は無言で頷くだけだった。
「それで、アンタとこの『樫原A』は一体どういう関係なンだい。」
小さなため息を一つして、与謝野は近くの椅子に座った。
敦はその写真から目を離すことなく口を開き始めた。
「彼女と初めて会ったのは……僕がいた孤児院の中ででした。」
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「ねえ。」
「え?」
声をかけてくれたのは彼女の方でした。
たった一人で僕が院の廊下を雑巾がけしてる時、突然現れたんです。
「一人でやってるのかい?」
「まぁ……そうだけど。」
今までに見たこともない女の子でした。
新しい子がくればすぐに院の中で噂になるんですけど、何故かその子だけに関しては何もなかったんです。見た目からしていい所で育てられていた感じはしていました。
でも、僕は何よりその目に……綺麗な翡翠の目に心を奪われていました。
僕が彼女の目をずっと見ていると
「おいおい、そんな穴が開くほど見たって私からは何も出てこないぜ。」
「え!?いや…!!その……。」
「ははっ、そんな慌てなさんな。雑巾、もう一枚ある?手伝うよ。」
そう言って彼女は僕の手伝いをしてくれたんです。ふと思って僕は彼女の名前を聞きました。
「ん?私かい?私は……の前に、君から名乗るのが礼儀ってモンじゃないか?敦くん。」
「いや……僕の名前知ってるじゃん。」
「あ、いっけない。やっちまった。……まあいいじゃないか、改めて君の口から聞かせてくれよ。」
彼女はその綺麗な目を細めて僕にお願いしました。
「敦……中島、敦。僕の名前は。」
「敦、善い名前じゃないか!私はA、樫原Aだ。よろしく頼むよ。」
そして彼女は僕の前に右手を差し出してくれました。僕も右手を出して握手をした。久しぶりに感じたその温もりは、とても心地の善いものでした。
彼女と話をしたのはそれきりでした。
それから僕は毎日、毎日彼女を孤独な院の中で探しました。会えたらいいな、そんな淡い思いの中でいつも細々と探していました。
けど風の噂で聞きました。彼女はあの日に新しい受け入れ先に行ってしまったと。
けれどある日、職員の話を小耳に挟んだんです。
彼女は……樫原Aは ________
死んでしまったと。
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夏蜜柑(プロフ) - さけられるチーズさん» コメントの返信が遅くなってしまいすみません。応援ありがとうございます。これからも頑張って書き続けますのでよろしくお願いします(^^) (2016年5月2日 17時) (レス) id: 4b1740a2d9 (このIDを非表示/違反報告)
さけられるチーズ(プロフ) - これからどう芥川さんにいくか気になります!♪( ´▽`) 更新頑張ってください! (2015年7月3日 19時) (レス) id: 26b822a438 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 中矢さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。期待に答えられるよに書いていきますのでこれからも是非よろしくお願いします。 (2015年5月5日 22時) (レス) id: 61e9595a71 (このIDを非表示/違反報告)
中矢(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。私も原作読んでます。いいですよね!続き頑張ってくださいね! (2015年5月3日 19時) (レス) id: 7f7dd8e1cd (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 禁煙Dutchさん» ありがとうございます。更新を頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2015年3月29日 21時) (レス) id: 9f8193b493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2015年3月20日 20時