十七話 ページ19
「ハァッ……!!ハァッ……!!」
街灯の明かりが夜道を照らす中、敦は息を切らしながら走っていた。
手には自分宛のグチャグチャになった封筒。
頬を通り過ぎていく四月の風がまだ冷たく感じた。
「まさか………!!」
そもそも何故敦はこんな夜中に走る羽目になっているのか。
そんなこと皆目見当もつかないなんて言わせない。
もちろん理由は______________
『 拝啓、中島敦様
いいえ、月下の鬼獣である人虎様。
この度は依頼を引き受けてくださって心からお礼を申し上げます。私自身が武装探偵社様の御所まで足を運べば良いものなのですがどうしても此方の都合によりお顔を見せれないのです。ゆえに貴方が桜に愛された場所にて私はお待ちしております。夜に見る桜もまた雅なことかと思われます。その下にてお話致しましょう。きっと貴方のことです、すぐさまその強靭な脚で駆けつけてくれることと存じ上げます。では後ほどお目にかかりましょう。
敬具__________ 』
長い文章の後、書かれていた名は
『樫原 A』
「樫原ッッ……!!Aッッ……!!」
少女の名を、樫原Aのその名を敦は唱える。
何故だ?何故なんだ?
敦の脳裏に疑問ばかりが決壊したダムのように流れ込んでくる。それを止める方法はない。
何故僕なんかに、いいや_______
何故『僕』なんだ?
「着いたッッ……!!!」
無我夢中で走り続けていた敦。
頭の中は疑問符の嵐が止まないがそれでもこの場に来てしまったのだ。
その場所は勿論
「やぁ、少年。いや…………『人虎』君。」
頭上から声がした。
声の出処へと敦が目をやるとそこにはあの少女が、樫原Aがいた。
そう、夕方太宰と共にAを送り届けたこの公園に。
「さっきぶりだねぇ、あーつしくん?」
Aは滑り台の柵の上に座ったまま敦を見下ろしている。
「さよならを言ったのは誰でしたっけ………?」
「厭だなぁ、あのさよならは太宰さんにだけだぜ?私は君に言ったつもりなど毛ほどにもないよ。」
そう言って身軽に柵の上から飛び、着地した。
警戒している敦にAは穏やかな表情を崩さずこう言った。
「私は君に、敦君に『用事』があるのさ。」
181人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏蜜柑(プロフ) - さけられるチーズさん» コメントの返信が遅くなってしまいすみません。応援ありがとうございます。これからも頑張って書き続けますのでよろしくお願いします(^^) (2016年5月2日 17時) (レス) id: 4b1740a2d9 (このIDを非表示/違反報告)
さけられるチーズ(プロフ) - これからどう芥川さんにいくか気になります!♪( ´▽`) 更新頑張ってください! (2015年7月3日 19時) (レス) id: 26b822a438 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 中矢さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。期待に答えられるよに書いていきますのでこれからも是非よろしくお願いします。 (2015年5月5日 22時) (レス) id: 61e9595a71 (このIDを非表示/違反報告)
中矢(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。私も原作読んでます。いいですよね!続き頑張ってくださいね! (2015年5月3日 19時) (レス) id: 7f7dd8e1cd (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 禁煙Dutchさん» ありがとうございます。更新を頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2015年3月29日 21時) (レス) id: 9f8193b493 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2015年3月20日 20時