past.42 ページ47
side.M
学校というのは不思議なところで１週間も経てば初めて会った時のような賑わいはなくなる。
俺としては慣れっこだった女子の群がりも最近はようやく落ち着きを見せ始めた。
授業を受けて、部活になると全力で。
そんな絵に書いたような高校生活に想定していない事があったとすれば、和だ。
俺は学校という組織自体が苦手で、友達も俺が認めた奴だけと連むというもの。
そんな中で和はいつの間にか俺の傍に居るというか、和と居ると妙に安心感がある。
だから、和だけは他の奴とは違うと思えた。
「潤くん、何してるんですか？早く行きましょ」
昼休みに入って直ぐ、俺の机に来るなり俺の弁当を引ったくりニヤリと笑う。
「あっ、ちょ和！待てって」
そのまま屋上に向かって走り出す和を慌てて追いかける。
なぜ行先が屋上だと分かるか、それはあの人達とそこで毎日ご飯を食べているから。
和は同じ野球部なだけあって足は速い。
それでも俺が全力で階段を駆け上がれば途中で追いつくことが出来た。
「はぁ、はっ…お前マジ速いって…」
「分かってますよ、潤くんがのんびりしてるからでしょ？さぁ行きましょ。愛しの翔ちゃんが待ってますよ」
途中で走ることを諦めたのかあまり息が切れていない和に流石だな、と思いながら弁当を受け取る。
ガッチリとした扉を押し開けて、屋上の真ん中のベンチに向かう。
「やっと来た…松潤とニノ。待ってたよぉ」
何故か疲れ果ててる風間先輩と俺と和に全力で手を振る相葉先輩。
「どうしたんですか？その顔」
「もう、櫻井先輩が居ないから相葉ちゃんと二人のご飯何か久しぶりで疲れたよ」
「あぁ、そういう訳ですか」
訳を聞いて納得した和はベンチに座り、俺にも座るように促す。
俺達がさっき入って来た扉をじっと見つめるもあの人が入って来る気はしない。
いつもこの時間なら来ているはずだから、今日も休みなのだろうか。
「で翔ちゃんは？今日も休み？」
俺の心を見ているかのようなタイミングで和が二人に問い掛ける。
その問いに相葉先輩が少し顔を歪ませたように見えたのは俺の勘違いだったのだろうか。
「今日も休みだって。さっき大ちゃんからメール入ってた」
「一昨日からですよね？大丈夫なのかな…」
「まぁ、明日には元気になってるよ」
心配そうな和に声を掛けたのは俺だけだった。
この言葉が相葉先輩と風間先輩を悩ませることになるとは衰微も考えなかった。
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年9月1日 14時
