ONLY LOVE ３【ARS】 (ページ34)

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93 囚われた渦に。ページ34

side.O

『少し頭が痛い』

そう素直に俺に伝えてくれた翔くんを連れて二階に上がった。

薬は飲まなくても平気だと言うから翔くんが眠りにつくまで手を握り続けていると、暫くしてから翔くんの小さな寝息が聞こえてくる。

繋いでいた手をそっと離して翔くんのデスクの椅子に座る。

部屋の電気は真っ暗とまではいかないものの、ほとんど光はない。

それでも少し離れた先に眠る翔くんは俺には月のように輝いて見える。

下からは相葉ちゃん達の楽しそうな声が聞こえてくる。

相当酔っているんだろうな。

まぁ、ニノや風間くんはそんなに沢山飲んでいなかったから大丈夫だろう。

一度、翔くんの寝顔を眺めてから翔くんの部屋を出て、自室に戻る。

適当にしまっていたスケッチを引っ張り出して来て、今日の日を思うままに描く。

懐かしいあのメンバーが揃った時の弾けるような翔くんの笑顔を残しておきたい。

ひたすらにその思いだけでペンを動かし続ける。

そうして、あっという間に時間は過ぎ、気付けば随分と時間が経っていた。

階段をコツコツと登る音が響く。

きっとニノ達が上がってきたんだろう。

「できた…やっぱ絵の中の翔くんもイケメンだな。写真撮ってみんなに送り付けてやろーかな」

画材を片付けながらそんな事を一人呟いていると「大野先輩」という声と共に扉をノックする音がなる。

「入っていいよ、風間くん」

少し遠慮気味に入ってきた風間くんは、俺の絵を見るなり「おぉー」と歓声を上げる。

「どぉ？俺の翔くん。やっぱ絵の中のでもイケメンだよなぁ」

「うん。ほんとに…凄いですよ」

俺の描いた絵をじっと見つめる。

その姿は翔くんとまるでそっくりで。

「で、どうかした？」

俺に聞きたいことがあって来たことは目に見えて分かっている。

そして、それがニノでも相葉ちゃんですら聞けないことである事も。

「翔くん、今はどんな感じですか？」

「悪くは…ないって感じかな。まぁ、この言葉の通り良くもないんだけどね」

それを言葉にしている自分が悔しくて堪らない。

「そうですか…俺に出来ることがあったら何でも言って下さい。いつでも力になりますから」

「あぁ」

嬉しい言葉のはずなのに、その言葉を素直に受け取ることが出来ないのは俺があの日の渦から抜け出せていない証拠かもしれない。

『翔くん、翔くんは？』

『俺が…俺のせいだから。ごめん、翔くん』

あの時の自分をどうしても許せない。