18 綺麗な才能は。 ページ18
side.S
今日はニノが帰ってくる日、そして智くんの作品の締切日。
智くんは断ろうとしてたんだけど、俺が強引に引き受けるように言った。
智くんの絵は人を笑顔にする。
泣いている人をも笑顔に出来る、そんな力を持っているんだ。
そんな才能を閉じ込めるなんて、俺には勿体ないって、そう思った。
凄いって感動するのと同時に、羨ましいとも思った。
俺には人を笑顔にする様な力はなくて。
むしろ、泣かせてばかりで。
そう、ありのままを伝えたら智くんは、翔くんはそこに居るだけで周りの人を幸せにしてるんだよ、と微笑んだ。
お世辞にも程があるって、言いたくても言えないほど智くんの目は本気だった。
嬉しくて、智くんの傍から離れたくなくて、この幸せを離したくないって。
「ただいまー」
馴染みのある声にドアを見ればニノの顔があった。
「おかえり、ニノ」
ニノは両手に紙袋を持っていて、つかつかと入って来るとテーブルにその紙袋を置き、俺と潤が座っているソファーに来た。
「案外早かったんだな、和」
「これでもお土産選ぶの時間かかったんですよ」
「お土産って…嬉しいけど、一応ゼミ旅行という名の研究会なんだろ？」
「まぁ確かにそうですけど」
ニノと潤のやり取りは普段通りで、何も変わらないこの空気が堪らなく愛おしくなった。
「じゃあ、和も帰ってきたことだし夜ご飯にするか」
潤がそう声をかけるとニノは自室に駆け上がって行った。
潤は俺の顔を見ては頷くもんだから、絵を描いているであろう智くんと恐らく自室で寝ている雅紀を起こしに行くことにした。
「智くん？ご飯出来てるよ」
ノックをしても声を掛けても返事がないから智くんも寝ているのかと思ってドアを開けたらキャンバスにひたすら色を付けていた。
もはや俺には到底言い表せない表現で、色が散っていた。
中に入っても気付く様子のない智くんの集中力は恐るべきものだ。
そっと近くに寄って、その絵を間近で見る。
「きれい……」
思わず漏れてしまった声はキャンバスに跳ね返って智くんにも届いたよう。
「何だ、翔くんいたんだ。ビックリした」
ようやく気付いたようで俺を見てはふふっと笑う。
「智くん、全然気付かないから……それよりこの絵、凄いね、智くん！」
智くんの絵の才能は知っていたが、この絵は今まで見てきたどれとも違う素晴らしさだった。
貴方が持ち合わせる才能は綺麗だ。
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未翔(プロフ) - 蒼星さん» 読んで頂きありがとうございます。そう言って頂けると有難いです。出来るだけ更新したいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2019年5月26日 12時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
蒼星(プロフ) - 初めまして。毎回更新を楽しみに拝読しております。わざわざ更新出来ない旨のご連絡ありがとうございます。読者は作者様から与えて頂くもので楽しませてもらっていますので多少の待ち時間は気にならないです。お気になさらずこれからも楽しみに待っています。 (2019年5月26日 11時) (レス) id: c0123debb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年5月19日 21時
