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『これが、本日マスコミ各社に送られてきた声明文となります。読み上げます。
「茅場町で起きた爆破は堕落した社会への天誅である。貴様らはあさましく金を奪い合うことに必死となり、自然を敬うことを忘れ、自らが神であるかのように振る舞っている。
ゆえに我々が貴様らの目を覚まさせ、いかに自らが脆弱な存在であるかを思い出させる。この汚れた社会が浄化されるまで、我々の天誅が終わることはない___真実の牙」
以上になります。警視庁はこの声明文と、先日茅場町で起きた爆発事件との関連性を慎重に.........』
興奮が滲むニュースキャスターの言葉を、櫻井は呆然と聞く。
画面には定規で引かれたのか、角張った字で記された声明文が大きく映し出された。
「これって……」
櫻井がかすれ声でつぶやくと、大野はテレビのボタンを押してミュートにする。
「さっきからニュースはこの話題で持ち切りだ。今日、マスコミ各社に声明文が届いた」
「声明文って、いまのめちゃくちゃなものがですか？」
櫻井の声が高くなる。
何となくそれらしいことを並べ立ててはいるが、よくよく聞くとその内容は完全に支離滅裂だ。
「ああ、めちゃくちゃだ。たぶん正体を悟られないために、色々な主張をわざと混ぜ合わせているんだろうな。ただ、問題はそこじゃない」
大野の表情が険しくなる。
「『我々の天誅が終わることはない』つまり、また爆発を繰り返すつもりだ」
大野の指摘に、櫻井は大きく息を呑んだ。
テレビ画面では、キャスターが顔を紅潮させながら何かまくし立てている。
「大野先生。やっぱり、赤羽さんのことを通報するべきじゃないですか？いくらなんでも大事になり過ぎていますよ」
櫻井は大野の顔色をうかがいながら提案する。
「だめだよ」
答えたのは、大野ではなく二宮だった。
「何でですか？」
櫻井は二宮に視線を向ける。
「そんな事をしたら、警察は彼女に厳しく尋問するはずだ。けれど、彼女は何も答えられないんだよ。記憶を完全に失っているのは本当だからね」
「けれど、警察なら赤羽さんがどこの誰だか、調べられるかもしれないじゃないですか」
櫻井が反論すると、二宮は鼻を鳴らす。
「誰だか分かったら、何だっていうんです？もし爆弾事件に関係していたとしても、赤羽さんは何も覚えていないんですよ。意味ないじゃないですか」
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年11月9日 16時
