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もともとあの医者は得体の知れない奴だった。
２年ほど前、借金を抱えている奴らの債務の肩代わりをしてやる代わりに、そいつらの腹に麻薬を仕込んで密輸を行うという方法を思いついた。
その密輸を実現するため、協力してくれる医者を探した。
口が堅く、金のためにはどんなことでもやる医者を、そうして見つけたのが『先生』だった。
紹介者の話によると、『先生』は１年ほど前から、銃創などの普通の病院に受診すれば間違いなく通報される傷の治療や、それ以上に表に出すわけにはいかない医療行為を高額で請け負っている医者だということだった。
後藤田のアイデアを聞いた『先生』は『運び屋』の腹から密輸品を取り出すための病院として勝本病院を用意した。
話によると経営難から一度、裏の医療行為を行う場として手術室を使わせてしまい、それからずっと裏世界と関係が切れない病院ということだった。
さらに『先生』は輸入元である東南アジアで『運び屋』の腹に密輸品を仕込んだ医者すらも見つけ出した。
川奈の遺体をバラバラにして埋めることも、『双子の涙』を大野とかいう医者達に調査させるために警察に川奈の身元をリークするのも、そして櫻井とかいう医者を盗聴するのもすべて『先生』のアイデアだった。
あいつを本当に信用していいのだろうか？
駐車場に着き、愛車の乗り込む後藤田の胸では不安が膨らんでいた。
しかし、いまはそのことについて深く考える余裕はなかった。
田村と菊野が逮捕されたとしたら『後藤田道貞』は終わりだ。
名前と顔を変えて別人にならなければならない。
そのためには『双子の涙』が絶対に必要だ。
あれを手に入れるためにほぼ全財産をはたいたのだ。
あれは俺のものだ。誰にも渡さねえ。
後藤田は力いっぱいハンドルを握りしめた。
・
ここだ……。
街灯の光も届かない森の奥、左手に大ぶりなスコップを持ちながら、後藤田は懐中電灯の光で地面を照らしていた。
青梅市の市街地から遠く離れた山奥、ここが川奈雄太の捨て場所だった。
去年の暮れ、『先生』の指示によってバラバラにした川奈の遺体の首と胴体を、後藤田は田村達とともにこの森に埋めた。
見つかれば身元が明らかになる可能性が最も高い部分、それを隠すのは人任せにはできなかった。
遺体を埋めた場所に目印を付けていてよかった。
後藤田は目の前にある太い樹の幹に彫られた×印を見ながら安堵の息を吐いた。
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ここここ(プロフ) - はじめまして！！！最近この作品と出会いまして、面白すぎて一気読みしました！読みながら「この人が怪しい、いやあの人も怪しいな…」と推理しながら読みましたが、まだまだ私の推理は稚拙なものでした…笑 続編も楽しみです！ (2021年11月18日 19時) (
レス) @page44 id: 6c5860f770 (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - stormさん» 読んで頂きありがとうございます。続編の方も宜しくお願いします！ (2021年11月12日 12時) (レス) id: 53c29ae25f (このIDを非表示/違反報告)
storm - どうも！とうとう完結か…とfin.の文字に寂しさを感じていた私ですが、続編という文字を見て舞い上がりましたw本当に完成度が高くて、すごくハラハラドキドキさせられる、素晴らしい作品でした。完結までお疲れさまでした！そして続編でもお世話になります！ (2021年11月9日 22時) (レス) @page43 id: 5bdda0872c (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - 彌生さん» 初めまして。読んで頂きありがとうございました。是非、続編でもドキドキを味わって頂けたらと。 (2021年11月9日 16時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - あきらさん» 初めまして。サスペンスが好きなんですね。楽しんで頂けたようで良かったです。 (2021年11月9日 16時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年9月24日 20時
