失恋日記【AS】 (ページ8)

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［side.A]

あの日以来、翔ちゃんと
ニノに関する話も恋愛の話もしていない。

お互い話さないと決めていた訳じゃないけどこれ以上あんな顔をさせたくなくて、その話題を避けていた。

日々の仕事。

俺らは自分で言うのもなんだけど振り幅が広い。

テレビにラジオ、雑誌。
ＣＭやドラマ。
そして本業でもある音楽活動。

「終わったぁー」
「無事に終わりましたね。お疲れさまでーす」
「いやぁ良いライブだった」
「大野さんの挨拶やっぱさすがだわ」
「あれ翔ちゃんの完コピだから」
「え？完コピ出来てましたっけ？ニノミヤさん」
「いや、出来てねぇっす」

楽屋に帰るまでの距離。

大して長くないこの時間にこれだけ盛り上がれる俺たち。

そして、楽しそうに笑ってる翔ちゃん。

やっぱりライブの力って偉大だなぁ。

ニノともこんなに楽しそうに話してて、
俺らの距離が昔みたいで少し懐かしく思えた。

・

各々がケアを終えて会場を出る。

そして、今日はホテルで食事会がある。

俺たちメンバーはもちろんスタッフの人も
参加するから物凄い人数だ。

ただ翔ちゃんは番組の密着があるらしく
早めに部屋に戻って行った。

「翔ちゃんいないし、ねニノ」

「なんすか」

「テレビ映りに行こうよ」

「はぁ？って言いたいとこだけど賛成。
何なら迷彩買っちゃってるし」

「じゃ行こ」

ニノを一味にして翔ちゃんの部屋に乱入。

快く迎えてくれた翔ちゃんはニノを見て一度だけ驚いたように口を開けてたけど、カメラが回っているから完全にバラエティーモード。

俺とニノも一緒に乾杯して、ちゃっかり迷彩の服もプレゼントして密着としても最高の取れ高だろう。

「じゃあ帰ります」
「ほらワクワクさん帰ろ」

そう言って一度は部屋を出た俺とニノ。

でも翔ちゃんから［今終わりました。来てくれてありがとう］っていうメールが来た瞬間に翔ちゃんの部屋に戻った。

・

俺は気付いていた。

ニノが携帯を弄るたび
すぐに反応する翔ちゃんの視線に。

ゲームをしだした途端に
ひどく安心した顔をすること。

でもさ言えないんだよね、俺も。

「好きって言いなよ」なんて。

片思いの辛さも翔ちゃんがどれだけ苦しんでるかも分かってるから「当たって砕けてみたら？」ってそんな無責任なこと言えないんだ。

ごめん翔ちゃん。

助けたいのに救いたいのに、
今は翔ちゃんが少し遠く感じる。

「好きって気持ちが大切だと思うよ」

分かってる。俺は翔ちゃんが好きなんだ。