失恋日記【AS】 (ページ9)

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［side.A]

あれからしばらく。

何度か熱愛の報道が出たことがあった。

その度に翔ちゃんは
自分の心に嘘をついて仕事を詰めた。

メンバー皆が彼を心配していた。

「翔ちゃん大丈夫？」
「ここのところハードすぎるんじゃない？」
「寝れるときはしっかり休んでくださいね」
「あんまり無理しないで」

それでも彼は「大丈夫」の一言で乗り越えようとしていた。

きっと俺以外のメンバーは翔ちゃんが無理に仕事を詰めようとする理由を知らない。

____叶わない恋を忘れたいから

翔ちゃんがニノを見つめるように、
俺は翔ちゃんを見ている。

だから一人で苦しむ翔ちゃんに気付けた。

でも、どうすることも出来ないなんて。

虚しくて悔しくて。
翔ちゃんもこんな気持ちだよね？

・

そして何もできないまま４年の月日が流れた。

事態が変わったのだ。

ある日、ニノは真面目な顔で「話したいことがある」と言って俺たちを集めた。

店に入り乾杯しても
ニノは一口飲んだきりジョッキを置いた。

言いたいことは何となく分かっていた。

俺はもちろん他の３人も。

「それで話って？」

なかなか話そうとしないから俺から聞いたら

「そのことなんだけど
俺、結婚することにした」

そう言った。

俺の頭は正直混乱していた。

20年来の仲である彼のめでたい話。

率直に嬉しかった。
俺も何度か会ったことのある人だし素敵な人だ。

でも、どうしても翔ちゃんのことが頭に浮かぶ。

「おめでと、え、ほんとに？ほんとなの？」

勢いのまま出た「おめでとう」という言葉。

言ってから翔ちゃんを見ることが出来なくなった。

今、彼がどんな気持ちで
どんな表情でいるか直ぐに分かる。

「まじか、おめでとう」
「おめでとう。幸せになれよ」

松潤と大ちゃんの祝いの言葉。

翔ちゃん、ごめん。
助けられなくて、知ってるのに苦しいこと。

俺だけが知ってるのに。

「おめでとう」という言葉に少し上ずった声で「ありがとう」と言うニノを今だけは見れない。

「おめでとう。ニノ」

「ありがと翔さん」

彼の声は不自然なくらいに震えていた。

ごめんね。
何度も何度も心の中で彼に謝った。

今からでも遅くないならその傷だらけの心を俺で埋めさせたい。

ニノの代わりでいいから。

・

「ゴールってスタートからは見えないでしょ？だから走りたくなるんだよね。例えどんなハンデがついてたとしても」

そうだ、ここはゴールじゃない。
まだスタート地点だ。