鼬の道【ゴールデンカムイ】 (ページ11)

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第拾壱話: 煌めかせるものページ11

「僕が育った村の裏山には竹林があって、大きなイノシシが住み着いていたんですが…そのイノシシが僕の弟を食っちゃったんです。

僕は幼い弟が泣き叫んでいるのをただ隠れてみてるだけだった。必死で抵抗しても為す術なく、話の通じない化け物に惨たらしく殺される、身の毛もよだつ死に方……

どれだけ痛くて怖かったか、絶望して光を失っていく弟の目……あの目を思い出すと

誰でもいいからぶっ殺したくなるんです」

辺見が詳細を事細かに話していくせいで、弓弦葉の頭の中の描写はより鮮明になってくる。きっと、これを聞いた二人は同じことを思ったに違いない。

この人と同じ屋根の下で過ごしてるのヤダな。

これから見る目と対応がまるっきり変わりそうだ。
彼の中にある心的外傷(トラウマ)が、彼を異常で倒錯した性癖を生み出してしまったのかもしれない。

「やはりこの気持ちをなかなかわかってくれない方が沢山いるので、これを話したのは貴方たちだけです」

『そっそうなんだぁ、その煌めきはわ、わかるよ』

「ちょお前！」

辺見は最初こそ何か言われるかもと少し悲しげな表情を見せていたが、弓弦葉の言葉で驚いて目を見開く。白石が制止するが、それはもう手遅れだった。

「…！貴方もこの気持ちがわかるのですか！よかったです、私たちは同士ですね！」

『そうだね！！』

対して、弓弦葉はやけくそで話していた。この場を収める為につい思ってもいないことを話してしまった後悔が沸いてくる。

これがきっかけかわからないが、辺見は翌日からやけに彼女の近くに来るようになっていた。

「弓弦葉さん、あそこに渡烏がいますよ」

『えっカラス？！どこにい…』

渡烏(ワタリガラス)は、ユーラシア大陸全域や北米大陸など広範囲に生息し、北海道の一部に冬に渡ってくる。冬の渡り鳥として越冬の為に流氷が来るころ知床(しれとこ)半島などのオホーツク海沿岸に飛来する。

ワタリガラスは丁度、何らかで落ちて死んでいたワタリガラスの幾つかのヒナと卵を数匹で共食いしている最中だった。思わず目がそれる光景を、辺見は恍惚とした表情でそれを見ている。

「カラスは、仲間のカラスが産んだ卵やヒナを食べてしまうことがあるそうです。生きたままではないのは残念ですが…これはこれで……あぁ…良い…」

『そ、そうか…』

あれから辺見から話しかける内容は大抵、生き物の死に様になっているので、弓弦葉は徐々に心身ともに不安定になってきていた。