歪んだ世界

23話 ページ24

アヤトsaid


あのハト女と出会ったのは雨の日だった


俺達が嫌う、クインケを優雅に扱って


俺が気に入らなかった奴を木っ端微塵にした


その動き、姿はスゲーカッコよくて、


初めてハトに感心した日でもあった


次の日、ハト女とわざとぶつかった時


俺の事を覚えてたってのが嬉しかったな


…まぁ俺にとって危ない事でもあるんだけど。


でもこのハト女。ハトのくせに俺を、喰種を庇う？のか？


よくわかんねぇけど助かった


こいつ、姉貴と一緒で平和ボケしてんのな


殺す気でぶつかったのに殺す気を失わせる特徴持ってる奴なんて初めて会った


その日は名前を聞かれて俺はその場に居たくなくてすぐに立ち去った


次の日は用水路で待ち伏せ？なのか？


ま、そんな感じで待ってたらノコノコやってきました

"バカだな"とか思いつつ"ハトのくせに手ぶらかよ"とか色々思ってた


でもあいつ違う。箱持ちだけど箱持ちじゃない


フルート？だかっていう楽器が入るケースを背負ってんのな


そりゃ、俺ら喰種が気がつかなくて当たり前だな

と、いうわけで。


行きつけの店にハト女、凛堂Aって言ったか


無理矢理連れ込んでコーヒーを頼み雑談した


あいつ…Aの過去はどんななんだろうな


"私だけ笑えないんだよ"


泣きそうな顔を浮かべて店を出て行った


俺はわけわかんなくてただ用水路にあいつが忘れ物した事に気がついて


ダッシュで取りに行った(夜中だったしな)


案の定喰種に襲われ俺が助ける羽目に


なんでこんなやつ助けたんだろうなとも


思ったり思わなかったり。


"黒ラビット"があいつの駆逐対象。


つまり…俺。


なぜか胸がきゅうっと締め付けられて俺はAから逃げた


1週間近くあいつは外に出なかった


だからその間俺は考えた。そして決めた


俺はAといたい、Aを知りたい


気がつけばあいつのことばかり考えてて


外であいつの匂いがした時すぐに駆けつけてしまっていた


目の前にいる大嫌いだったハト。


でも俺の好きな人


こいつの駆逐対象は俺。まだ知られていない


触れたくて俺はつい、抱きしめた


思ったより女で華奢でいい匂いがした


…変態みてぇだな


ま、言わなくていいこと散々言って気持ちを伝えた

でも俺は覚悟しなきゃいけない


俺はこいつの駆逐対象


ならこいつが俺だと気づく前に


俺がこいつに殺されよう


好きな人の手で。俺は…


喰種だという事を初めて恨んだ


世界は…運命は残酷だ

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